作業プラットフォームとして機能拡張した“Archicad”で広がる「BIMの木」:Building Together Japan 2020(1/3 ページ)
梓設計は、GRAPHISOFTのオンラインイベント「Building Together Japan 2020」で、「設計者をつなぐBIM」のテーマで講演を行った。梓設計によれば、設計効率的なワークフローを実現するBIMでは、設計者、経験、技術の3つがつながり、スピードや品質が向上するという。
グラフィソフトジャパンは2020年10月1日、オンラインで「Building Together Japan 2020」を開催した。同イベントは同社の製品やソリューション、ユーザーによる利用例などを幅広く紹介するもの。イベントでは、Archicadの新バージョン「Archicad 24 日本語版」のリリースに合わせ、関連する機能や使い方などについての紹介も行われた。
今回は、セッションの中からArchicadユーザーによる基調講演として行われた梓設計の「設計者をつなぐBIM」と題する講演の内容を紹介する。
チームメンバーの連携を実現し、意匠・構造・設備をワンパッケージで管理
梓設計の講演では、アーキテクト部門 DワークスAXチーム副主幹 サブリーダー 石川隆一氏と、アーキテクト部門 BASE01副主幹 墓田京平氏が登壇した。
まず、石川氏が2021年で創立75周年を迎える梓設計が得意とする設計分野、とくにBIMを含む先進技術を活用したワークスタイルへの取り組みについて紹介した。
梓設計は空港やスポーツ施設、ヘルスケア分野の設計領域に強みを持つ組織系設計事務所として、これまで多くのプロジェクトにBIMを導入してきた。2019年8月には、今まで天王洲と羽田に分かれていたオフィスを統合。「成長するオフィス」というコンセプトのもと、BIMはもちろん、AIやIoTなどの先進技術を活用したトライアルを行っている。
以前の梓設計では、一つのテーブルを囲んでアイデアを出し合い、スケッチを重ねながら設計を行うスタイルで仕事をしていた。しかし、コロナ禍によりリモートワークを主体としたワークスタイルに切り替わった。その中で、BIMが作業のプラットフォームとして、中心的な役割を担っているという。今回の講演では、「つなぐ」をテーマにBIMと設計の関係性を強調した。
組織系設計事務所では、意匠・構造・設備がワンパッケージになっていることで社会の要請に素早く応え、質の高い建築を生み出している。石川氏は、設計事務所がワンパッケージになっている強みは、「連携の基盤となるワークフローを整え、より生産性を向上できること」と語る。そして、そのカギとなるのがBIMとしている。
BIMで設計者をつなぐとは?
石川氏は、「BIMがつなぐもの」として、まず設計者を挙げた。例えば、Archicadのチームワーク機能は、設計者同士をつなぐツールとして一般化している。ただ、従来型のチームワーク構成では、意匠設計者はチームワークでつながっていたが、構造設計者はチームワークの外にいた。これが、新しいArchicad24では“ワンプラットフォーム化”され、意匠設計者だけでなく構造設計者もチームワークにつながる。
チームワーク機能の拡張は、すなわちワークフローの効率化に寄与する。第一に想定されるのがスピードの向上だ。意匠・構造・設備がそれぞれの部門に分かれていた従来のワークフローでは、設計を進める中で必要になる情報をその都度、他部門に要求しながら作業を行う。このため、部門間の調整作業も必然的に多くなる。
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