「作るBIM」から「使うBIM」へ、大林組の“LOD”を共有する管理システムの全容解説:Autodesk University 2020(4/5 ページ)
多岐にわたる膨大な情報を内包しているBIMモデル。必要に応じて適切な情報を選び出すことが、BIMモデルを活用するための大前提となる。だが、実際には「どの情報が信じられるか?」を見ただけで判別するのは難しい。しかも、この問題を解決するカギと目される詳細度「LOD」もモデルとの間に大きな断絶がある。そこでLODに基づきながら、BIMモデルを介したコミュニケーション環境を構築しようという新たな取り組みが始まっている。「Autodesk University 2020」で、大林組でデジタル推進室iPDセンターに所属し、全社的なモデリングルール整備などBIM運用の管理業務を行う谷口隆二氏と、応用技術でBIM事業の立ち上げを主導し、親会社のトランスコスモスと共同のシステム開発も含めたBIMトータルサービス「to BIM」をローンチする高木英一氏の発表から、LODを一元的に関係者間で共有する管理システムの全容を紹介する。
システムの機能はどのようなもので、何が実現するのか?
では、実際に新システムで、何が実現されるのか?谷口氏は具体的な機能として、インスタンスのLOD管理とプロパティ管理を解説した。
「最初に紹介するのは、LOD要件に基づきインスタンスの状態を管理する機能。インスタンスのステータス入力パネルは、位置の状態値を示す〈Position〉とタイプ選択の状態値〈Type〉の2行に分けられ、それぞれの状態値を分数で示します。分母は現フェーズで到達すべきLODを、分子は現在到達している状態値を示します。また、進展途上の状態入力画面では〈Good〉や〈Bad〉の入力で意志を提示。その判断が誰のものか示します。さらに作業完了時には、承認者が〈Approve〉を入力して作業の完了を表明します」。
次にLOD要件に基づきプロパティの状態を管理する機能は、チェック対象の選択ダイアログパネル上で操作する。パネル上で、チェック対象とするLOD管理上の部位名を選択し、同じくチェック対象となるLODを選べば、当該LODにおけるプロパティ要件が表示される。最終的なチェック結果は、Revit上でレポートとして見ることができるのだ。
従って、プロパティの正解が一つの値ならこのレポートから即座に修正できるし、この「修正する/しない」をレポート上で選ぶことも可能である。
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