個人設計事務所がBIMを武器に生き残っていく術、GLOOBEセミナー:BIM(1/3 ページ)
福井コンピュータアーキテクトは、「はじめてのBIM入門セミナー」を開催した。東京会場では、畝啓建築事務所がこれまでに手掛けたBIM案件を披露しつつ、BIMが小規模な設計領域でも有効なことを説いた。
福井コンピュータアーキテクトは、「はじめてのBIM入門セミナー」を全国18会場で開催した。セミナーは、BIM活用を検討中の人向けに、活用事例の紹介をはじめ、BIM自体の概要説明や同社のBIMソフトウェア「GLOOBE」の操作体験会も行った。本稿では、2019年7月17日に開催した東京会場での模様をレポートする。
BIMの定義は、3次元形状×建築情報
セミナー第1部では、福井コンピュータアーキテクトJ-BIM推進室の菅原誠志氏が、「BIMによって変化する建築設計の将来像〜施工BIMへの活用〜」と題し、BIM入門編として解説した。
菅原氏は、BIM(Building Information Modeling)の定義を「建物とそれに関わる多様な情報を3次元建物モデルに集約・統合したもの。3次元形状と建築情報を融合させたBIMを一種のデータベースとして、設計から施工、維持管理に至るライフサイクルを通して活用するこれからの建築手法だ」とした。
BIMで、建築情報が可視化されることで、プロジェクトメンバーや発注者と、これまでバラバラだった平面図、立面図、断面図のデータが3Dで一元化して共有することが可能になる。概算数量の把握や整合性の確保も容易となり、例えば小規模な設計事務所であっても、建物データベースを設計・施工だけで使うのではなく、その先の改修工事など、維持・管理段階でも施主への提案に利用することで顧客の囲い込みにもつながる。
従来の2DCADは、変更箇所があると複数ある図面を手直ししなければならず、設計コストの増大につながっていた。一方、BIMは、単一の建物モデルで切れ目なしに、加筆・修正が行え、変更コストが少なくて済み、意匠・構造・設備を総合的に設計できる優位性がある。
菅原氏は、「BIMによって、基本設計段階で実施設計の前段を済ませられる。これまで施工段階でしか分からなかったことが、設計時点でも分かるようになり、作業を前倒しして行う“フロントローディング”が実現する」と、生産性向上をもたらすBIMの利点を強調した。
最新のBIM動向としては、2019年4月に国土交通省で「建築BIM推進会議(仮称)」が設置されたことに言及。これを契機に、設計、施工、維持管理の一気通貫の取り組みが官民一体で本格的に推進されていくとした。
今後のビジョンでは、「BIMの本領は3D以降にある。次にあるのが4Dの時間軸、5Dのコスト、6Dの環境解析、7Dのライフサイクルコスト(LCC)、8Dの安全軸での活用だ。当社のBIMソフトウェア“GLOOBE”は、国内の建築基準法に沿っており、他社ソフトだと別のソフトを介さなければならないが、建築基準法インフォメーションが1つのソフトに内包されているのが他に無い点」として、3次元の先にある可能性を示した。
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