「作るBIM」から「使うBIM」へ、大林組の“LOD”を共有する管理システムの全容解説:Autodesk University 2020(2/5 ページ)
多岐にわたる膨大な情報を内包しているBIMモデル。必要に応じて適切な情報を選び出すことが、BIMモデルを活用するための大前提となる。だが、実際には「どの情報が信じられるか?」を見ただけで判別するのは難しい。しかも、この問題を解決するカギと目される詳細度「LOD」もモデルとの間に大きな断絶がある。そこでLODに基づきながら、BIMモデルを介したコミュニケーション環境を構築しようという新たな取り組みが始まっている。「Autodesk University 2020」で、大林組でデジタル推進室iPDセンターに所属し、全社的なモデリングルール整備などBIM運用の管理業務を行う谷口隆二氏と、応用技術でBIM事業の立ち上げを主導し、親会社のトランスコスモスと共同のシステム開発も含めたBIMトータルサービス「to BIM」をローンチする高木英一氏の発表から、LODを一元的に関係者間で共有する管理システムの全容を紹介する。
新システム3つの基本機能と、システム構築のための準備
新しいシステムの基本機能として谷口氏が最初にピックアップしたのは、LODを利用した「要素(インスタンス)の状態管理機能」だ。これはLODをもとに、BIMモデルを構成する各要素の進展度を分かりやすく示すもの。
一方、「プロパティの状態管理機能」は、目標LODに向けてプロパティが適切に入力されているかどうか管理し、プロジェクトのルール適用に関するコミュニケーションを円滑化する。
また、「LOD要件の登録機能」は、各段階で行うべきことをデータで記述する機能で、これによりモデリングにおける現在の目標をユーザー間で共有しやすくする。
「このようなシステムを構築するためには相応の準備が必要でした。すなわちシステマチックなモデリングルールの構築と運用可能なLOD要件の定義です」。モデリングルール構築のため、谷口氏らはまずモデリングルールの目的を確認した。データの記述が物件や人、フェーズにより異なると、データ利用時に常に人の解釈が必要となり、無駄な手間が発生する。これを避けるため、谷口氏らはモデリングルールについて「BIMがもたらすデータの“型”を揃(そろ)える」という目標を定めた。──ではデータの「型」を揃えるのに必要なモデリングルールの条件とは何か?
システマチックなモデリングルール構築
「スムーズな運用のため、モデリングルールは適用しやすく・照合しやすく・更新しやすいのが理想です。誰もが記憶しやすくコンピュータの支援も得やすいものでなければなりません」。
条件を満たすため、ルールはまず「情報が構造化(階層化)され、データで記述できること」と位置付けた。使われているのは、命名規則で階層を追加していく手法だ。具体的には、「製作物」「規格物」などの製造法による分類や「銅製」「アルミ製」などの素材で分類する。
また、プロパティの優先順位も活用。パラメータには「Aが決まればBが決まる」といった形で従属関係があるが、パラメータAはBよりも優先度が高いと言い換えられ、パラメータの優先度を明確化することで構造化できる。
「続いてモデリングルールをデータで記述する手法ですが、これはデータベースが処理しやすい文字列を使うことが基本となります」。データベースが実行できる文字列のフィルターは主に「〜で始まる or not」「〜で終わる or not」「〜を含む or not」の3つなので、これを意識してプロパティの使う文字列の構成を考えていく。例えば、接頭辞を素材表現に使い、仕様情報の表現には接頭辞と重複しない別の列の文字列を当てる。これにより、文字列のフィルター操作で任意の対象を取得する操作も可能になる。「このようにシステマチックにルールを構築することで、機械的なプロパティ照合が可能になるため、恩恵は非常に大きい」。
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