大成建設が可動型保管棚を低コストで免震化できるシステムを開発:免振
大成建設は、物流倉庫などで物品保管用として広く使われている可動型保管棚の柱脚部に、鋳鉄の支承を取り付けるだけで免震化が図れる簡易免震システム「TASSラック−スライダー」を開発した。今後、新システムの導入を顧客に提案するとともに、据え置き型の保管棚「パレットラック」や「中量棚」などでも適用できるように開発を続けていく。
大成建設は、物流倉庫などで物品保管用として広く使われている可動型保管棚の柱脚部に、鋳鉄(ちゅうてつ)の支承を取り付けるだけで免震化が図れる簡易免震システム「TASSラック−スライダー」を開発したことを2021年2月10日に発表した。
震度5強から6強程度までの地震に対して免震効果を発揮
昨今、頻発する地震災害に備えるため、各企業はBCP対策として、建物の免震化や制震装置の導入など減災対策の検討を進めており、生産施設や物流施設でも、稼働を停止しないために、地震対策技術の開発が行われ、こういった技術の適用が増えている。
しかし、レイアウトが自由に設置できる可動型保管棚を使用している倉庫などでは、保管棚別の有効な地震対策技術がなかったため、従来建物全体あるいは床全体を免震化するしかなく、ニーズが多くあるにもかかわらず高コストが阻害要因となり、震災に対処することが難しかった。
そこで、大成建設は、低コストで免震化が可能なTASSラック−スライダーを開発した。TASSラック−スライダーは、保管棚の柱脚部に鋳鉄支承を取り付け、鋳鉄に含まれる黒鉛の潤滑効果により保管棚を床上で滑らせる機構で地震時の揺れを低減し、積荷の落下被害と保管棚の転倒と損傷を減らす。具体的には、保管物品を含む棚全体重量で2割以上の水平力が作用すると保管棚が滑ることにより、震度5強から6強程度までの地震に対して免震効果を発揮する。
使用されている鋳鉄の支承は、一般棚タイプと積み重ねタイプの2種類を用意しており、いずれも保管棚の柱脚に穴をあけ、ボルトなどで固定するだけで装着。さらに、新規だけでなく既存の保管棚にも後付けで適用が可能だ。
大成建設は、兵庫県南部地震に相当する震度6強を再現した振動台による実証実験で、TASSラック−スライダーの性能を検証した。結果、未対策の場合は積荷が落下したのに対して、TASSラック−スライダーを配置した保管棚の応答加速度は最大で約40%低減され、積荷のわずかなズレにとどまった。応答加速度は、地震による地表の揺れなどにより、対象となる地点の構造物などが揺れる速度の変化率を指す。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 三井住友建設が地震時に免震層の動きを遠隔で計測する変位計を開発
三井住友建設は、遠隔地から地震時における免震層の動きを計測可能なジョイスティック変位計を開発した。今後は、これまで免震層の水平変位を記録する手段として使用されてきた「けがき式記録計」に代わる計測システムとして、ジョイスティック変位計の適用を進めていく。 - 住戸内の“梁型ゼロ”で自由度の高い設計を可能にする免震タワー型マンションの新構法、三井住友建設
三井住友建設は、住戸内の梁(はり)型をゼロにした免震タワー型マンションの新構法「Sulatto Core-Grid Tower(スラット コア グリッド タワー)」を開発した。この構法であれば、免震に加えて、高さ2400mm(ミリ)のハイサッシによる開放感をも両立させた自由度の高い設計が可能になる。 - 25tの車両が通過可能な鋳鉄製の「免震エキスパンションジョイント」
大成建設と日之出水道機器は共同で、25トンの車両を載せられる鋳鉄製免震エキスパンションジョイント「TH-SLIDER」を開発した。 - 2棟の免震建物を接続する新工法、免震建物の増築でも適用可
竹中工務店は、実施設計と施工を手掛けた総合病院「国立循環器病研究センター」に、2棟の免震建物をつなぐ、新開発のエキスパンションジョイントを適用した。 - 中間層免震建物に導入できる高減衰ゴム製ブロックの緩衝装置、大林組
大林組は、中間層免震建物に導入できる高減衰ゴム製ブロックの緩衝装置「免震フェンダー」を開発した。今後、同社は、免震フェンダーを免震建物における想定以上の地震に対するフェイルセーフ機構としてユーザーに提案する方針を示している。 - 地震発生時にインフラケーブルの損傷リスクを軽減する免震建物用ラック、大林組
大林組は、電気や通信ケーブルの損傷リスクを軽減できる免震建物用ケーブルラック「ニュートラダー」を開発し、東京都清瀬市の大林組技術研究所で、3次元振動台を用いてニュートラダーの検証実験を実施して、阪神・淡路大震災、東日本大震災、熊本地震などの大きな地震動に対しても安全に稼働することを確認した。