BIM導入のメリットを検証する「大和ハウス工業チームの連携事業」Vol.3:BIMで建設業界に革命を!10兆円企業を目指す大和ハウス工業のメソッドに学ぶ(15)(5/5 ページ)
2020年に国交省が公募した「BIMを活用した建築生産・維持管理プロセス円滑化モデル事業」とは、策定された「建築分野におけるBIMの標準ワークフローとその活用方策に関するガイドライン(第1版)」(2020年3月)に沿って、設計・施工などのプロセスを横断してBIMを活用する建築プロジェクトで、BIM導入の効果検証や課題分析などを試行的に行う施策である。当社は、モデル事業に選ばれなかったが、連携事業として子会社のフジタとともに、設計〜施工〜維持管理で、プロセスを横断してデータを一気通貫での活用に取り組んだ。仮想の建物ではあったが、BIMの活用において、当社のBIMの取り組みを最大限に発揮する絶好の機会となった。今回は前回に続き、我々の連携事業の、施工段階移行の具体的な取り組みについて、説明を加える。
施工における設備の取り組み
最後に、施工における設備の取り組みについて述べておく。今回は、設計と施工の両方で「Revit MEP」を活用した。当社の設備担当者も、まだ不慣れのため、モデル作成には苦労し、施工連携も理想通りとはいかなかったが、統合モデルが常時できていて、常に最新の状態で納まりが確認できることで、業務効率化につながると感想を口にしている。
さらに設備サブコンとして参加していただいた新菱冷熱工業に、ダクトなどの製造連携についても検討していただいた。Revitで作成したモデルから、ダクトやエルボの製造情報が作成できる部分は、設計・施工情報の製造情報連携として、とても興味深いものであった。試算によると、こうした製造連携によって33%の効率を上げることができるとされる。鉄骨や設備のように、他工種でも製造連携が進めば、大幅な効率化が期待できるはずだ。
修繕・維持管理では、設備が中心であると言える。当社が維持管理ソフトとして本事業で用いた「Archibus」は、Revitであれば直接モデルから情報を読み取ることができるので、情報を加えたモデルを発注者に引き渡すだけでよいが、その他のソフトを連携しようとるすると、かなりの工数が増えることになる。このようにRevit MEPを設計・施工で活用することは、BIMデータの活用・BIM360対応・製造連携・維持管理連携において、重要なことを再認識した。今後は社内での習熟度を高めるとともに、対応できるサブコンが増えることを期待したい。
今回の連携事業は、仮想物件ではあったが、半年間50人近くが真剣に取り組んだおかげで、これまでに気付かなかった知見を得ることができた。設計部門については、本連携事業で、BIMの国際規格「ISO 19650-1,2」の認証を国内で初めて取得することも成し遂げた。また、施工部門に関しては、フジタの積極的な取り組みに、今一度、感謝したい。
また、徹底的にBIMを活用し、BIMガイドライン及びISOに基づき、BIMプロセスを改善すれば、大幅な業務効率化による生産性向上へと至る道筋が拓けると、改めて確信した。
著者Profile
伊藤 久晴/Hisaharu Ito
大和ハウス工業 技術統括本部 建設デジタル推進部(旧・BIM推進部) シニアマネージャー(2020年9月現在)。2006年にオートデスクのセミナーでRevitの紹介をし、2007年RUG(Revit User Group Japan)の初代会長となって以来、BIMに目覚める。2011年RUG会長を辞して、大和ハウス工業内でBIMの啓蒙・普及に努め、“全社BIM移行”を進めている。「BIMはツールではなく、プロセスであり、建設業界に革命を起こすもの」が持論。
近著に「Autodesk Revit公式トレーニングガイド」(2014/日経BP)。
★連載バックナンバー:
『BIMで建設業界に革命を!〜10兆円企業を目指す大和ハウス工業のメソッドに学ぶ』
■第14回:BIM導入のメリットを検証する「大和ハウスグループチームの連携事業」Vol.2
■第13回:BIM導入のメリットを検証する「大和ハウスグループチームの連携事業」Vol.1
■第12回:「設計BIM全社移行を実現する社内教育の秘訣!Webインターンシップ」
■第11回:「設計BIM全社移行を実現する社内教育の秘訣」(BIM導入期編)
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