熊谷組が小断面トンネル向けの積み込みシステムを開発、遠隔操作に対応:山岳トンネル工事
熊谷組は、積み込み機や鋼車積込搬送機(トレンローダ)、鋼車運搬機で構成される小断面トンネル向け積み込みシステムを開発した。システムの操作は、カメラやモニター、対象物との距離を色で見える化する「遠近距離可視化ガイダンスシステム」を用いて、遠隔で行える。
熊谷組は、トンネル施工時における生産性と安全性の向上や作業環境の改善を目的に、小断面トンネル向けの積み込みシステムを開発したことを2020年12月17日に発表した。
積み込み機は従来機と比べて生産性が約50%アップ
今回開発した積み込みシステムは、積み込み機や鋼車積込搬送機(トレンローダ)、鋼車運搬機で構成されており、幅2.6メートル程度の小断面トンネルを対象としている。
積み込み機は、1時間当たり150立方メートルの積み込み能力を備えており、従来の小断面用積み込み機と比較して生産性が約50%上がっている。積み込み機の操縦は、カメラとモニターを使用した遠隔操作で行える。遠隔操作の際には、本体の外側に装着された距離計測カメラで取得した画像を基に、対象物との距離を色で見える化し、モニターに映す「遠近距離可視化ガイダンスシステム」も使える。
遠近距離可視化ガイダンスシステムは、視覚的にオペレーターが対象物との距離を測るのに役立つ他、遠隔操作では把握が難しい奥行き感を理解しやすくするため、作業効率のアップにも貢献する。
鋼車積込搬送機は、ベルト幅750ミリで、全長は36メートルに及び、鋼車4両分の積み込みに応じ、荷重は鋼車と支持台車で支える設計で、坑道半径R200メートルのカーブにも対応できる。鋼車運搬機は、鋼車積込搬送機に合わせた専用のもので、スライド式の4立方メートル鋼車。鋼車本体でベルコンフレームを支持する機構で、土砂などを運ぶ時は坑外に配置したロボットで引き出す。
今後、熊谷組は、つくば技術研究所で、小断面トンネル向けの積み込みシステムを試運転した上で、改良を加えながら2021度中に現場へ導入する予定だ。
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