鹿島ら、トンネルの覆工コンクリート打設を完全自動化:山岳トンネル工事
鹿島建設は、岐阜工業、シンテックと共同で、山岳トンネル工事における打設配管システムを開発し、覆工コンクリート打設を完全自動化した。省人化、省力化を図り、従来工法と同等のコストを実現する。
鹿島建設は、岐阜工業、シンテックと共同で、山岳トンネル工事における打設配管システムを開発し、覆工(ふっこう)コンクリート打設を完全に自動化することに成功した。アジテータ車の入替え時以外は人の手をまったく介さず、省人化、省力化を図り、品質を確保しながら、従来工法と同等のコストを実現する。
今回新たに開発したのは、各打設口を一筆書きで接続できる打設配管システムだ。最大の特徴は「回転式の吹上打設口」で、打設を完了した際は、回転して型枠表面と同じ位置で蓋が閉まると同時に次の打設口への配管ルートを形成する。トンネル覆工用高流動コンクリートには、同社開発の「増粘成分一液型の高性能AE減水剤」を改良して取り入れ、締固めを不要とした。
これにより、従来の吹上打設配管システムの課題であった、打設中の残コンの回収や配管清掃が不要となる。ポンプ車でポンプを逆転・正転させ、残コンを回収し左側の配管へ送る手法で残コンを減らすことも可能だ。
また同システムでは、配管の分岐点に設置した「高速配管切替装置」により、左右系統の切替えが3秒、打設口の切替えも含めて15秒で行うことができ、流動停止時間を縮小できる。
さらに、ポンプ車と連動させ配管系統を自動で切り替え均等に吹上打設を行う「打設制御システム」も構築した。打設口の切替高さ、左右の切替えを行うポンプ車のストローク回数などの打設計画をシステムに入力しておく。スタートボタンを押すだけで、自動で全断面が計画通りに打設される。
同社では既に模擬トンネルで2回の打設試験を行い、システムの有効性と表面の仕上がり状況を確認。2021年度の実現場への導入と、セントルのセットから打設、養生に至る全ての工程を自動で行う統合システムの構築を目指す。
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