シニア世代のベテラン従業員への建設業の需要を調査、職場の高齢化と若手離れが判明:調査レポート
JAGフィールドは、建設会社の経営者1062人を対象に、シニア世代のベテラン従業員へのニーズなどをリサーチした。結果、全体のうち、60%以上の職場で平均年齢が40歳以上だと判明した一方、平均年齢が30歳未満の職場は約10%程度で、建設業界の若手離れが深刻なことが明らかになった。
JAGフィールドは、建設会社の経営者1062人を対象に、シニア世代のベテラン従業員についてインターネット調査を2020年10月21日〜2020年10月23日に行い、同年11月30日に発表した。
90%以上の対象者がベテラン人材は「安心できる」と回答
調査結果によれば、職場の平均年齢について対象者に質問したところ、「40歳以上〜50歳未満」と答えた人が全体の38.6%で最多となった。次いで、「30歳以上〜40歳未満」が28.6%で、50歳以上〜60歳未満が21.9%、「20歳以上〜30歳未満」が8.4%、「60歳以上」が1.7%、「20歳未満」が0.8%と続いた。全体のうち60%以上の職場で平均年齢が40歳以上だと判明した一方で、平均年齢が30歳未満の職場は約10%程度で、建設業界の若手離れが深刻なことが明らかになった。
「建設業界に年齢は関係あると思うか」という質問では、「どちらかといえば関係ある」の回答が48.4%で最も多かった。次に、「関係ある」が32.9%で、「どちらかといえば関係ない」が12.2%、「関係ない」が6.5%となった。
建設業界に年齢は関係ないと答えた対象者に理由を聞くと、「やる気や人柄など、少しでも力になってくれる人が必要と考えているから(30代/男性/埼玉県)」「年配の方は知識が豊かで、若手は力やアイデアがあるので(40代/女性/愛知県)」「技術があればいつまでも働けるので(40代/女性/埼玉県)」「必要なのは理解力、技術力、判断力、正確な納期などであり、年齢は全く関係ない(50代/男性/滋賀県)」といった声が寄せられた。
「建設業界にベテラン従業員がいると安心できるか」と対象者に質問したところ、「どちらかといえば安心できる」と答えた人が46.6%で最も多く、次いで「安心できる」が43.9%で、「どちらかといえば安心できない」が6.5%、「安心できない」が3%だった。
また、「建設業界でシニア世代のベテラン従業員が必要か」という質問では、「どちらかといえば必要」と回答した人が49.4%で最多。次に、「必要」が40.4%で。「あまり必要ではない」が8.1%、「必要ではない」が2.1%。
必要と答えた対象者に理由を聞くと、「安心感があり、アドバイスをもらえるから(30代/女性/神奈川県)」「若手へのアドバイスがうまくできるから(40代/女性/愛知県)」「技術力や指導力が身に付いているから(40代/男性/大阪府)」「豊富な経験に基づくノウハウを持っているから(50代/男性/岐阜県)」といった意見が届いた。
「シニア世代の求職者数はどのように変化しているか」と対象者に尋ねたところ、「増加している気がする」が答えた人が38.3%で最も多かった。次に、「変わらない」が34.4%で、「年々増加している」が15.6%、「減少している気がする」が8.6%、「年々減少している」が3.1%だった。
さらに、「シニア世代の求職者数における採用数はどのように変わっているか」という質問では、「変わらない」と回答した人が48.1%で最多だった。次に、「少し増やしている」が29.5%で、「増やしている」が11.7%、「少し減らしている」が7.8%、「減らしている」が2.9%。
「シニア世代のベテラン従業員に任せたいと思う仕事は」と、複数回答可能の条件で対象者に質問したところ、「若手世代の育成や教育」と回答した人が56.8%で最も多かった。次いで「施工管理」が41.0%で、「工事監理や品質管理」が29.8%、「安全巡回や現場管理」が26.8%、「建築設計」が17.7%、「CADオペレーター」が14%、「積算」が13%、「マシンオペレーター」が12.1%、「その他」が1.4%と続いた。
シニア世代のベテラン従業員に仕事を任せたいと思う理由について、対象者に聞くと「若手の教育がうまく、若手が育つのが早いため(40代/男性/群馬県)」「危険予測ができて安全に仕事ができるため(40代/男性/新潟県)」「現場の状況に応じて臨機応変に対応してくれるため(50代/男性/静岡県)」「知識が豊富で作業時間が短縮されるため(50代/男性/北海道)」といった声が寄せられた。
<調査の概要>
調査時期:2020年10月21日〜2020年10月23日
調査対象:建設会社の経営者
調査手法:インターネットによるアンケート調査
アンケート回収数:1062人
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