建設キャリアアップシステムの基礎知識:設備業ITフェア ONLINE 2021
政府は2020年1月1日に、外国人が技能実習生として建設業で働く際の新基準を施行した。新基準では、当該企業と対象の外国人技能実習生が建設キャリアアップシステムに登録していることや当該企業が建設業法第3条の許可を受けていることを義務化している。
全国設備業IT推進会は、設備分野の最新ソリューションなどを紹介するイベント「設備業ITフェア ONLINE 2021(会期:2021年2月9〜10日)」をオンラインで開催した。
会期中に繰り広げられたセミナーの中から、ブランド社会保険労務士・行政書士事務所 所長 兼 リンクス人事コンサルティング 特定社会保険労務士・行政書士 金井雄吾氏が、建設キャリアアップシステム(Construction Career Up System、CCUS)の基礎知識について説明した講演をレポートする。
技能者が有している能力を1〜4のレベルで区分
金井氏は、「国土交通省が発表したデータによれば、2018年時点で、建設業に従事する労働者は、全体のうち55歳以上が約3割で、29歳以下は約1割にとどまった。現在でも業界では、働き手の高齢化が進むとともに、若年層の入職者が増えていないことから、若手の確保と育成が喫緊の課題になっている。また、建設業を辞めた若い人材の辞職理由を国交省が調査したところ、“キャリアの道筋が立たない”“技術・技能の習得が難しい”“労働に対し賃金が低い”といった声が寄せられ、建設業のワークスタイルに問題があることが明らかになった。解決策として、国交省や民間団体がCCUSの構築に乗り出した」と経緯を述べた。
CCUSは、技能者の資格や社会保険の加入状況、現場の就業履歴などを業界横断的に登録・蓄積する仕組み。技能者が能力や経験に応じた処遇を受けられる環境を整備し、将来に渡って建設業の担い手を確保することを目的としている。
CCUSの構築に当たり、日本建設業連合会、全日本建設技術協会、建設産業専門団体連合会、全国建設労働組合総連合といった団体が仕様などを検討し、2019年1月から3月まで、特定の現場においてCCUSの限定運用を行った。その後、限定運用で培った知見を踏まえて2019年4月からCCUSの本運用がスタートした。
CCUSの申請窓口は、建設業振興基金の専用サイトと認定登録機関の受付が担っている。CCUSへの登録申請は2019年10月1日から、原則として専用サイトからのインターネット申請のみの対応となり、受付での申請を希望する際には、認定登録機関に問い合わせする必要がある。
建設会社がCCUSの登録申請を行う場合、専用サイトのフォーマットに必要事項を入力し、建設業振興基金による入力事項の審査後、登録料を支払い、登録が完了して、CCUSのIDを受領できる。
IDを取得することで、建設会社はWeb上の専用システムにログインできるようになり、専用システムで、自社と他社の所属技能者と就業履歴のデータを見られる他、所属技能者の就業履歴や社会保険加入率、有資格者数を確かめられる。
技能者がCCUSに登録する時は、専用サイトのフォーマットに必要事項を入力し、登録料を支払い、建設業振興基金による入力事項の審査後、登録が完了して、システムのIDとカードを受け取れる。IDを得ることで、技能者は、Web上の専用システムにログイン可能になり、専用システムで自身の就業履歴や技能に関するデータをチェックでき、経歴を証明する書類として出力することも可能だ。
技能者に交付されるカードは、技能者が備えている能力のレベルに合わせて色分けされており、能力のレベルは1〜4に区分される。レベル1は初級技能者を指しカードの色は白で、レベル2は中級技能者を示してカードの色は青。レベル3は職長として現場に従事可能な技能者を指しカードの色は銀で、レベル4は高度なマネジメント能力を備える技能者を示しカードの色は金。
カードは、現場の入退場時に、就業履歴登録アプリ「建設レコ」をインストールしたPCや携帯端末と接続したカードリーダーにタッチすることで就業履歴を記録する。
金井氏は、「CCUSを企業が導入するメリットには、公共工事の入札で優遇される点や経営審査事項での加点、施工能力と保険加入状況が可視化され元請と発注者に会社をアピールしやすくなる点、施工体制台帳および作業員名簿の作成と退職金の事務手続きが簡素化される点がある。一方、CCUSの技能者への利点には、技能を適正に評価される点、自身の実績を簡単に照明できる点、建設業退職金共済事業本部への掛け金を漏れなく積み立てられる点が挙げられる」と語った。
CCUSと外国人労働者の関係に関する説明で、金井氏は、「政府は2020年1月1日に、外国人が技能実習生として建設業で働く際の新基準を施行した。新基準では、当該企業と対象の外国人技能実習生がCCUSに登録していることや当該企業が建設業法第3条の許可を受けていることを義務化している」とコメントした。
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