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コロナの影響でマンション市場に大幅な変化、長谷工総研の独自分析から読み解くマンションビジネス総合展(1/3 ページ)

2020年上半期の新規分譲マンションの供給は首都圏/近畿圏とも減少となり、全体として大幅な減少。価格面では、首都圏で平均面積が減少し、1平方メートルあたりの価格が大幅に上昇した一方で、近畿圏の平均価格は横ばい、面積の縮小も若干にとどまる結果となった。

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 新型コロナウイルスは、首都圏/近畿圏の分譲マンション市場に少なからぬ影響を与えた。コロナ禍で営業活動と新規物件の供給が十分にできなかったことに加え、在宅勤務の浸透により、顧客側の意識も変化した。求められる物件にも変化が起きつつある。

 長谷工総合研究所 取締役 市場調査室長の酒造(みき)豊氏は、2020年度に新設され、日本初を謳う建築・住宅・マンションの各ビジネスにスポットを当てた専門展示会「住宅ビジネスフェア/非住宅 建築フェア/マンションビジネス総合展 オンライン」(会期:2020年10月26〜30日)のうちマンションビジネス総合展の特別講演で、「今後の分譲マンション市場の行方」と題する特別講演を行った。セミナーでは、2020年上半期の分譲マンション市場における新型コロナウイルスの影響と顧客の動向についての独自分析を解説した。

供給減少と価格上昇が同時に進む首都圏


講師を務めた長谷工総合研究所 取締役 市場調査室長 酒造豊氏

 講演は、2020年の上半期を総括するところからスタート。首都圏と近畿圏に分けて、それぞれに詳細なデータを示しながら進行した。

 2020年上半期の新規分譲マンションの供給は、首都圏で7497戸(前年同期比で44.2%減)、近畿圏で5299戸(同29.5%減)となり、全体として大幅な減少になったことが示された。


首都圏では、上半期として初めて1万戸を大幅に下回る供給数

 価格面では、首都圏の平均が6668万円(同11%アップ)、平均面積が64.68平方メートル(同4.9%縮小)、1平米あたりの単価が103万円(同17.3%アップ)と大幅な上昇となった。近畿圏では平均価格が4602万円(1.0%低下)、平均面積は68.71平方メートル、単価が67万円となり、面積の縮小は少なく価格も横ばい。

 2020年は、新型コロナウイルス対策としての外出自粛要請などもあり、4月からの3カ月間は、販売活動が実質的に停止した。物件の供給戸数が伸びなかった最たる理由といえる。酒造氏は、この状況を「新型コロナウイルス感染症拡大の影響で、マンションのマーケットがこれまでと一変した」と話す。

大規模物件が減少、10戸未満の小規模傾向が継続

 首都圏の販売では、売り方や物件の供給内容に変化が見られることも指摘した。分譲マンションの供給数が2020年上半期で大幅減となった要因は、総戸数200以上とされる大規模物件や20階以上の超高層共同住宅の供給が減ったことが影響を及ぼした。

 これらの物件は、以前は首都圏全体の供給戸数を支えてきた。しかしこの大型物件が減り、物件の構成比でも縮小している。酒造氏は、「1回あたりに販売する戸数も10戸未満のものが多くなり、小規模化の傾向は継続している」と現状を説明した。

 供給数の減少は、エリア別にも見て取れる。都内23区はもとより、郊外エリア、千葉や埼玉も含めて、若干の自治体で供給が増加したものを除き、全体的な供給戸数は大幅に減っている。


首都圏の供給は、一部を除き全体的には減少傾向。オレンジと黄色が増加した場所

 マンションの供給に対する販売状況は、2019年に比べ60%台で推移しているという。一時的に50%台となることもあるが、全体としては68%ほどになっている。「好不調の波を繰り返しながらも安定的に動いている」(酒造氏)。

 マンションの販売状況は、初月の販売率で70%を超えると一般的に“好調”とされる。現状では好調には一歩及ばないが、思ったほど悪くはないというところにあるようだ。

 懸念とされる在庫については、6月末で7389戸、7月末で4250戸という具体数が示された。酒造氏は、「ちょっと積み上がっているが、急激な増加にはなっていない」との認識を示した。

 ちなみに、販売活動がほぼ停止していた4月や5月でも在庫の数は減少。マンションを購入したい顧客の意欲が、コロナ禍でも消滅していないことを示している。


販売活動が停止した4月・5月でも在庫は減少している

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