時速100kmで覆工コンクリートの変状を検出するシステムが国交大臣賞:第4回インフラメンテナンス大賞(3/3 ページ)
国土交通省らは、第4回インフラメンテナンス大賞の表彰式を開催し、応募総数288件の中から、計35件の受賞事例を発表した。今回は、時速100キロでも覆工コンクリートの変状を高解像度で検出するシステムが国土交通大臣賞を受賞し、AIを活用した「送電鉄塔の腐食劣化度診断システム」が経済産業大臣賞に入賞するなど、受賞事例は多岐に及んだ。
レーザースキャナーと3DMCで施工を効率化
国土交通大臣賞は、メンテナンス実施現場における工夫部門で、宮城県 土木部 港湾課とあおみ建設の「仙台塩釜港西ふ頭桟橋・観光桟橋災害復旧事業」が受賞し、メンテナンスを支える活動部門で管清工業の「下水道管内調査のライブ映像公開による下水道の見える化と地域住民との交流」、技術開発部門で東京大学と中日本高速道路(NEXCO中日本)の「高速道路のトンネルにおける時速100キロ走行での覆工コンクリート高解像度変状検出手法」が選ばれた。
宮城県とあおみ建設の仙台塩釜港西ふ頭桟橋・観光桟橋災害復旧事業は、2011年に起きた東日本大震災により被災した遊覧船と離島航路の船舶が利用する施設の再建を目的としている。当該施設は、遊覧船などの利用が年間約30万人以上に上ることから、供用しつつ建物を復旧しなければならなかった。
また、被災による沈下は37〜40センチに及び、上部工の嵩(かさ)上げで修繕する際には、下部工の耐久性を補強する必要があった。そこで、解決策として、あおみ建設が開発した「Re-Pier工法」を採用した。Re-Pier工法は、既設の杭をストラット部材で連結と固定し、杭を補強するため、上部工を撤去することなく基礎杭の剛性を高められる。
管清工業の取り組みは、下水道管の存在や管理の重要性を地域住民に広く知ってもらうために、下水道管内におけるTVカメラ調査の現場で、設置したモニターなどを使用して、下水道管内の様子を通行人にライブ映像で公開するというもの。
東京大学とNEXCO中日本が開発した覆工コンクリート高解像度変状検出手法は、高速道路の点検で時速100キロの走行時でも、静止時と遜色(そんしょく)無い鮮明な4Kレベルの高解像度画像を連続して取得可能なシステムを活用している。
システムは、規制外走行で、得られたデータから、複数のトンネル覆工コンクリートにおける展開図を作成した実績があり、5年に1回の定期点検と比べて変状が進行しているかを確認することを容易にした。また、普通車両にシステムを搭載し、通常巡回するだけで点検が行えるため、安全性向上やコストダウンが見込める。
インフラメンテナンス大賞選考委員長の三木氏は講評で、「第4回インフラメンテナンス大賞は過去最多となる288件の応募があり、第1回の248件と比較して40件増えた。内容は、インフラの維持管理に変化をもたらす新技術やメンテナンス現場を効率化する工夫、地域住民にインフラの重要性を啓発する取り組みなど多岐に及んだ」と語った。
なお、今回は厚生労働大臣賞と防衛大臣賞の該当案件は無かった。
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