時速100kmで覆工コンクリートの変状を検出するシステムが国交大臣賞:第4回インフラメンテナンス大賞(2/3 ページ)
国土交通省らは、第4回インフラメンテナンス大賞の表彰式を開催し、応募総数288件の中から、計35件の受賞事例を発表した。今回は、時速100キロでも覆工コンクリートの変状を高解像度で検出するシステムが国土交通大臣賞を受賞し、AIを活用した「送電鉄塔の腐食劣化度診断システム」が経済産業大臣賞に入賞するなど、受賞事例は多岐に及んだ。
レーザースキャナーと3DMCで施工を効率化
農林水産大臣賞は、メンテナンス実施現場における工夫部門で岩田鉄工所とカミノの「可搬式水問開閉装置“すぐれ門”による水門開閉作業の負担軽減」が受賞し、技術開発部門で真柄建設の「ICTを活用した曲面形状のコンクリート構造物“固定堰(こていぜき)”の改修」が選出された。
岩田鉄工所が開発した可搬式水問開閉装置「すぐれ門」は、平時だけでなく、悪天候や増水時など危険な環境下で、農業用の水門を自動で行えるという機構。また、既設水門の形状に合わせて補助具の製作が可能なため、取り付けに大規模な工事を必要とせず、低コストで多様な形式の既設水門に導入でき、水門開閉にかかる時間や労力、危険性を削減する。
真柄建設の取り組みは、コンクリート構造物の改修工事で、ICTを活用し既設の構造物に適した形状の設計と高い精度でのコンクリート下地形成を実現した。具体的には、対象となる既設固定堰の計測や設計・施工にレーザースキャナーと3Dマシンコントロール油圧ショベル(3DMC)を導入し、3次元計測データから最適な補強形状を作成して、3DMCでは衛星測位システムを用いた自動制御で施工を行い、生産性を上げた。
経済産業大臣賞は、メンテナンスを支える活動部門で関西電力送配電の「設備情報を用いた効率的な更新計画の策定」が受賞し、技術開発部門で東北電力ネットワークとSRA東北の「AIを活用した送電鉄塔の腐食劣化度診断システム開発・運用」が入賞した。
関西電力送配電の事例は、電力インフラの中心となる変電設備や送電設備、配電設備の情報を収集と解析し、設備更新の優先順位を付けけられるシステムを開発したもので、将来的に効率的な設備更新計画を立てる上で役立つ。
システムは、これまでの点検により数十年にわたり収集した変電・送電設備の状態情報をまとめ、データベースを構築し、設備改修の必要時期や優先順位がシステム的に判別できる仕組みを構築。送電設備については、送電線がある場所の環境データを収集し、解析を行いマップ化して、設備の腐食速度から余寿命を高精度で推定する手法を開発した。
配電設備では、AIを使用したビッグデータを用いて分析することで、各設備の劣化状況を定量的に評価し、改修判断基準の見直しと中長期改修計画の策定に活用している。
東北電力ネットワークらが開発した「送電鉄塔の腐食劣化度診断システム」は、送電鉄塔の目視点検による腐食劣化度判定の個人差解消や送電鉄塔の腐食傾向把握、補修工事計画立案の効率化を目指して現場に導入された。システムは、撮影した画像情報から送電鉄塔の腐食劣化度をAIで自動判定し、位置座標や線路名などの鉄塔情報と合わせてデータベース上で一元管理できる。
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