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FMにBIMを活用する(その2)「JFMAのBIM・FM研究部会の活動とFM的発想“使う側の視点”」いまさら聞けない建築関係者のためのFM入門(8)(2/2 ページ)

本連載は、「建築関係者のためのFM入門」と題し、日本ファシリティマネジメント協会 専務理事 成田一郎氏が、ファシリティマネジメントに関して多角的な視点から、建築関係者に向けてFMの現在地と未来について明らかにしていく。今回は、JFMA内のBIM・FM研究部会の活動を中心に、FMとBIMの関係性を紹介していく。

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◆今後に向けて――

 ライフサイクルを通してBIMを活用するには、技術面、運用面、費用面、人材面など、まだまだ課題が残っている。しかし、IoTやAIは加速度的に進化し、企業の営みや産業全体がデジタル化し、デジタルトランスフォーメーション(DX)の時代はそこまで来ている。

 今までなかなか浸透してこなかった在宅勤務のテレワークやWeb会議、Webセミナーなど、まさに働き方改革が、新型コロナウイルス感染症で強制的にできるようになったが、そのような変化に対応できなければ滅びていくしかない。私たちは、設計・施工のツールとしてのみBIMを捉えるのでなく、ファシリティのライフサイクルを通して活用できるように、さらにはDX時代に向けてBIMはいかにあるべきかを考えていかなければならないのである。

 最後にエピソードを2つほど紹介して、参考に供したい。

◆エピソード−1「ある社長さんからのコメント」

 もう25年以上も前の古い話である。「CAFM(Computer Aided Facility Management)」の導入時に、FMに詳しいある社長と交わした会話である。私が、CAFMシステムを紹介し、そこに取り入れる図面、建築(意匠)図、構造図、設備図について説明した時のことである。

 すると、その社長は、「それらはつくる側の理屈の図面だろう。私は使う側の図面が欲しい。意匠屋は意匠図しか書けないから、意匠図だけの話をする。構造屋も設備屋も同様でそれで図面が分かれているのだろう。私は意匠図と一緒にオフィスレイアウト図も見たい。家具屋に聞いてくれなどとは言わないでくれ。それらを総合的に見たい。オフィスレイアウトを見ながら、そこの壁を外せるのか構造壁なのかを知りたい、コンセントがどこからとれるかが知りたい。面積を壁芯で測っているが、私たちは、内法でタイルカーペットを敷ける面積を知りたい。消防点検に来るといわれたら、それに必要な情報のみ集めた図面が欲しい」、まさに滔々(とうとう)と使う側の論理で欲しい図面を要求された。


「つくる側の論理と使う側の論理の違い」

 FMを理解していたつもりで説明していたのだが、一瞬戸惑ってしまった。図面については、つくる側の発想しかなかったのである。各図面をレイヤー分けする提案などをして何とかその場はしのいだが、つくる側の目線でしか見れていなかった自分が情けなかった。

 読者の方々はいかがだろうか。図面一つとっても、つくる立場と使う立場の違いを認識しているだろうか。

◆エピソード−2「FMは維持管理ではない」

 これもある発注者から頂戴した意見である。「設計や施工に携わる建築関係者は、モノ作りは自分たちが主役で、人の金でつくったものでも自分の作品と呼ぶ。発注者が呑気(のんき)なのか、建築関係者が無頓着なのか、それがまかり通っている。どちらが上とか下とかいう話ではないが、妙な話だね」。自分もその世界にいたので偉そうなことは言えないが、耳の痛い話である。

 さらに、建築関係者は、「企画→設計→施工→維持管理」の流れを、川上から川下へと表現する。FMを「施設管理」と訳された時から(今もそういう方もいるが)「維持管理」と誤解して、FMは川下を担っているという。それは、立ち位置の違いを理解していないことを意味する。FMが「企画→設計→施工→維持管理」という流れのどのパートを担っているかではなく、この流れの全段階の発注者側がファシリティマネジャー側で、受注者側がコンサルであり、設計者であり、ゼネコンであり、ビルメン業者であることをご理解いただきたい。ファシリティマネジャーは発注者側で、建物のライフサイクルを通してマネジメントする人なのである。「維持管理」を専門にする人ではない。

 そして、FMの標準業務サイクルは、「FM戦略・計画→プロジェクト管理/運営維持→評価→改善」の「PDCA」の考え方が基本であり、これをスパイラルアップしていくのがFMの業務である。川上から川下というトップダウンの発想ではない。それに維持管理が川下の終点でもない。

 ゆえに、多くの場合、ファシリティマネジャーは「企画」から入るのではなく、その前段階の現状評価や課題抽出から携わり、改善の一方策として建物の新築があり、その「企画」に参加する場合が多いことも理解しておきたい。その「企画」の前段の仕事として利用者の満足度調査やそれらをもとにしたブリーフィング(プログラミング)といった設計のための要求条件整理をして、「企画」へつないでいくことがファシリティマネジャーの重要な仕事でもある。


「FMの標準業務サイクル」

 かつて、最初に白紙状態で「企画」から始まるようなイメージで「企画→設計→施工→維持管理」という話をしたら、ある教授に「あなたは、いまだにゼネコンの考えが抜けていないね」と言われたことがいまだに忘れられない。

著者Profile

成田 一郎/Ichirou Narita

2011年7月、社団法人日本ファシリティマネジメント推進協会(現:公益社団法人日本ファシリティマネジメント協会:JFMA)常務理事兼事務局長に就任。2016年6月には日本ファシリティマネジメント協会 専務理事に就任し、現在に至る。

一級建築士。認定ファシリティマネジャー。

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