FMにBIMを活用する(その2)「JFMAのBIM・FM研究部会の活動とFM的発想“使う側の視点”」:いまさら聞けない建築関係者のためのFM入門(8)(1/2 ページ)
本連載は、「建築関係者のためのFM入門」と題し、日本ファシリティマネジメント協会 専務理事 成田一郎氏が、ファシリティマネジメントに関して多角的な視点から、建築関係者に向けてFMの現在地と未来について明らかにしていく。今回は、JFMA内のBIM・FM研究部会の活動を中心に、FMとBIMの関係性を紹介していく。
◆あらためてFMとは?
技術やツールを考えるとき、その目的や目標を明確にすることが大切である。BIMをファシリティマネジメント(FM)の視点で考える時も同様で、あらためてFMとは何かを整理しておきたい。
FMとは、「企業・団体などが組織活動のために、施設とその環境を総合的に企画、管理、活用する経営活動」と、FMの教科書「公式ガイドファシリティマネジメント」(FM推進連絡協議会編、日本経済新聞出版社、2018年)では定義している。ここで指す「施設とその環境」がファシリティであり、FMとは、「ファシリティを通じた経営活動」といえる。
FMの実践を担うファシリティマネジャーとは、自ら所有または賃貸するファシリティ(土地・建物・ワークプレース・設備などのハード・環境・ソフト・サービス)を、経営的視点で、ライフサイクルを通して企画・管理・活用する業務を担う人のことだ。
そのファシリティマネジャーのための資格制度があり、資格試験に合格して登録した者には「認定ファシリティマネジャー(CFMJ:Certified Facility Manager of Japan)」の称号が与えられ、FMのプロフェッショナルとして第一歩を踏み出すことになる。1997年に資格制度が創設して以来、2020年末で資格試験合格者は1万5000人を超え、認定ファシリティマネジャーとしての資格登録者は約7000人に上る※1。
※1 JFMAの認定ファシリティマネジャー(CFMJ)資格者統計データ(受験者数・合格者数・資格登録者数)
資格試験は、全国9カ所の会場で実施していたが、2018年度は7月の西日本豪雨で広島会場が中止、2020年度の資格試験は、新型コロナウイルス感染症の影響を受け中止となるなどしたため、リスク対策と受験者の利便性を考慮し、2021年度よりPCで受ける試験「CBT(Computer Based Testing)方式」に変更し、全国280カ所のテストセンターで、受験日時も選択できるようになるように準備を進めている。
◆JFMAの調査研究委員会に「BIM・FM研究部会」を発足
10年ほど前に、当協会JFMAとして、ファシリティマネジャーにBIMをどのように理解してもらうか、どこまで踏み込むべきかの検討を進めていた。その結果、当協会内の調査研究委員会に「BIM・FM研究部会」を発足させ検討することが必要と判断した。当協会には、現在18の調査研究部会があり、FMのさまざまな分野の調査研究を行っている。
その1つの部会として、BIM・FM研究部会は、2012年9月に猪里孝司部会長(大成建設 設計本部)のもとで発足した。当初は14人ほどの部員も、現在は50人を超えている。当協会の部会は、産官学、ユーザー、サプライヤーなどの多様な分野の方々が参加され、当協会をプラットフォームとして活用し、フラットな関係で活動している。いわゆる業界団体ではないのでパワーはないが、ダイバーシティーに富み、自由な雰囲気で、多くの知見が集まるのが特徴である。
同部会は、活発に活動し2015年4月には、ファシリティマネジャーにとってBIMの入門書ともいえる「ファシリティマネジャーのためのBIM活用ガイドブック」を発行した。BIMの考え方・特徴・効果やライフサイクルを通した情報管理の大切さ・活用の可能性などを提言するとともに、出版記念セミナーなども開催した。
さらに、2019年8月には「ファシリティマネジメントのためのBIMガイドライン」の出版に至り、BIM活用の現状、関係者の役割やBIM実行計画、FM業務で必要なBIMのモデルについて解説し、さらに事例紹介と未来の話でまとめ、関係各所には大いに参考にしていただき、こちらも出版記念セミナーを催した※2。
さらに、今後に向けて、FMでのBIM活用を推進し、FM業務の効率化・高度化に寄与するため、FM業務でもBIM活用事例をまとめた事例集の出版などの計画も進めている。
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