従来比でサーバ室の面積を90%削減する液浸冷却システム、大成建設ら:製品動向
大成建設らは、超高集積・高発熱サーバ向けに、空冷方式の冷却システムと比較して冷却に要するエネルギーを約90%低減し、空気の流れを考慮したラック配置が不要となり、サーバ室の面積をこれまでと比べて約90%削減する液浸冷却システム「爽空sola」を開発し、実証試験により新システムをデータセンターに適用した際の優れた性能を明らかにした。
大成建設は、RSIや篠原電機と共同で、超高集積・高発熱サーバ向けに、省エネルギー性能と高い冷却能力を備えた液浸冷却システム「爽空sola」を開発したことを2020年7月14日に発表した。
空冷方式と比較して冷却にかかるエネルギーを約90%
近年、デジタルトランスフォーメーション(DX)の進展に伴い、データセンターでは高度な情報処理を行うサーバの設置台数が増えるとともに、単位面積当たりの電力消費量が増加し、冷却能力の向上が必要になっている。
しかし、従来の空気による冷却方式(空冷方式)で高度な情報処理に対応するためには、サーバのスペース増大と空調エネルギーの増加が避けられなかった。解決策として、大成建設やRSI、篠原電機は、液体の持つ熱搬送能力に着目した国産液浸冷却システムの爽空solaを開発し、実証試験により新システムをデータセンターに適用した際の性能を検証した。
新システムを適用したデータセンターは、液浸冷却槽1槽で50キロワットの冷却能力を備えているため、超高集積・高発熱サーバに対して高密度化して運用することが可能になる。50キロワットの冷却能力は、空冷方式を採用したシステムの1ラックと比較して、10倍に相当する。さらに、空冷方式と比較して冷却にかかるエネルギーを約90%低減するため、電力消費量を減らせる。
また、従来のように空気の流れを考慮したラック配置が不要となり、サーバ室の面積をこれまでと比べて約90%削減し、省スペース化が可能となり、データセンターの小型化を実現する。
2019年度に着手した液浸冷却システムの実証試験では、新システムの適用により、データセンターで当初想定した上記の性能を発揮できることを確認し、空冷方式に比べ冷却時の機械音が小さくなり、静音性に優れた快適なサーバ室環境を構築可能なことも明らかになった。
今後、大成建設は、大量のサーバを運用するデータセンター事業者やサーバ室を保有する企業に対し、新システムの実装を提案していく。また、5G通信基地局や自動運転システムなどの大量データを扱う情報・通信インフラ、VR/AR、eスポーツ・オンラインゲームを展開する企業に対しても、導入・実用化の可能性を追求し、新システムに関しては排熱の温水利用といった環境配慮に向けた性能向上にも取り組む方針を示している。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 自律走行ロボで病院業務のDX、大成建設らが名大附属病院で実証
大成建設は、ICTを活用した効率的な運用を行う次世代型病院「スマートホスピタル構想」の実現に向け、名古屋大学医学部附属病院メディカルITセンター、モノプラスの協力を受けて、自律走行型の多目的ロボットを導入した病院運用システムの検証を名大附属病院で進める。病院運用システムが実用化すれば、病院スタッフの業務負担が軽減されるだけでなく、入院患者の容態急変などへの迅速な緊急対応、さらに感染症予防にもつながるという。 - 大成建設、従来の空調に比べ40%以上省エネの新液冷システム開発
大成建設は、空調の省エネ化と作業現場の最適化を推進する新空冷システムを開発した。 - 病棟間におけるナースコールシステムの連携を実現するソフト、大成建設
大成建設は、複数の病棟に設置された各ナースコールシステムを連携するソフト「T-Flex Nursecall」を開発した。今後、大成建設はベッド稼働率の向上に役立つ「ナースコールシステム連携ソフト」として、新築病院や既存病院のリニューアル工事に適用し、普及を図っていく。 - 隈研吾建築都市設計事務所が手掛ける初のZEB建築、伊丹市新庁舎と仮設作業所でZEB Ready取得
隈研吾建築都市設計事務所が基本設計を担当し、大成建設が実施設計から施工までを一括で担う伊丹市の新庁舎新築工事で、国内初となる本設建物の庁舎と仮設作業所の両方でZEB Ready認証を取得した。延べ床面積2万平方メートルを超える大規模建築の庁舎としては、西日本初のZEB Ready認証を受けたケースにもなるという。 - ゼネコン7社が減収減益で増益は「鹿島」と「フジタ」のみ、2021年3月期第2四半期決算
ヒューマンタッチ総研は、2021年3月期第2四半期決算のまとめと今後の市場予測を公表した。レポートでは、土木工事業と電気設備工事業が比較的好調な一方で、総合工事業、管工事業、プラント・エンジニアリング業、住宅・不動産業では厳しい決算結果になったと分析している。 - 難波中2丁目に“ホテル京阪”が出店、大成建設らの開発で2023年春開業
大成建設、関電不動産開発、南海電気鉄道は、大阪・難波中2丁目で、ホテル京阪の9階建てホテルの建設を2023年春の開業に向け計画を進めている。 - ケーブル不要の“LPWA”通信でトンネル坑内の計測時間を半分に、大成建設
大成建設は、トンネル坑内の計測作業にLPWA無線通信を採り入れ、通信ケーブル無しで1キロ以上の長距離通信を可能にする計測システムを実用化した。今後は、山岳トンネル工事で行う多くの計測作業に適用することで、現場での作業の省力化を図っていく。