ケーブル不要の“LPWA”通信でトンネル坑内の計測時間を半分に、大成建設:山岳トンネル工事
大成建設は、トンネル坑内の計測作業にLPWA無線通信を採り入れ、通信ケーブル無しで1キロ以上の長距離通信を可能にする計測システムを実用化した。今後は、山岳トンネル工事で行う多くの計測作業に適用することで、現場での作業の省力化を図っていく。
大成建設は、山岳トンネル工事の坑内での計測作業を省力化するため、通信ケーブルを使用せずに、長距離通信が可能なLPWA(Low Power Wide Area)無線通信技術を用いたトンネル坑内計測システム「T-RIPPA」を開発した。既に同社が施工する国内道路トンネル工事現場で、T-RIPPAを用いてデータ計測状況を検証し、計測作業の大幅な省力化による生産性向上が可能なことを確認した。
1キロ以上の長距離通信を実現
山岳トンネル工事では、安全かつ確実に施工するため、掘削後のトンネル変形の有無やトンネルを保持する掘削面周辺の岩盤状況を詳しく把握することが重要とされる。そのため工事を進めていく過程では、随時、計測作業を行い、そこで得られたデータを基に、トンネル工事の適切な掘削方法や補強部材を選定しながら施工を行う。
しかし現状の計測作業は、トンネルの工事進捗に合わせて通信機器の移設や増設などの盛替え作業が必要で、機器の設置、機器への電力供給・通信ケーブルの設置・保守、データ回収など、多くの時間と手間を要していた。また、近年は坑内Wi-FiやBluetoothによる無線を利用した計測も進んでいるが、安定したデータ通信の可能な距離が数メートルから100メートル程度までのため、トンネル延長が長くなると盛替え作業などが不可避となっていた。
そこで大成建設は、従来の問題点を解消するトンネル坑内計測システム「T-RIPPA」を開発した。T-RIPPAは、LPWA無線通信を採用することで、1キロ以上の長距離データ伝送を可能とした。そのため、工事進捗にあわせた無線通信装置の移設や増設の回数を格段に低減できる。
また、LPWA無線通信モジュールとアンテナを計測機器内部に組み込み、小型電池だけで作動するため、通信ケーブルが無くても安定して計測する。また、通信ケーブルが不要となることで、ケーブル発破防護の手間もなくなるため、坑内計測作業の大幅な省力化が実現する。
計測データは、無線データ受信装置を介してクラウドサーバに集約され、Webアプリ上に自動作成されたグラフをリアルタイムに確認できることに加え、データのダウンロードにも対応している。インターネット環境を整備すれば、現場や作業所から遠くはなれた地点でもPCやスマートフォンを用いた情報共有が可能になる。
実証実験では、TT-Monitorトンネル上部(天端)の微小傾斜を高精度MEMSセンサー
で捉える独自の傾斜計「TT-Monitor」に、LoRa通信モジュールとパターンアンテナ、MEMS傾斜センサーから成る20センチほどのT-RIPPAを設置。計測担当者の作業効率を検証した結果、データ回収から分析までの計測作業に要する時間が半分以下になったという。
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