BIMモデルを“次世代の施工用図面”として一貫利用するプロセスを確立、大林組:BIM
大林組は、BIMモデルから2次元の生産設計図(施工用図面)と3Dモデルを出力して、現場の監理者や施工者、協力会社がタブレットで不整合を確認できるBIMを基盤にした次世代型生産設計図のフローを確立した。今までのように、BIMモデルに修正が入っても、その後2次元の施工用図面も変更する煩雑さが無くなり、BIMモデルの設計・施工での一貫利用が可能になるとしている。
大林組は2020年11月2日、BIMモデルの情報を生産設計図(施工用図面)として直接視覚化させた「次世代型生産設計図」を実用化したと発表した。
「BIMモデルを主体とした」一貫性のある実務運用が可能に
大林組では、BIMモデルを業務基盤として一貫利用することを会社方針としており、建築物の計画から設計、施工、維持管理までの各段階に応じて、BIMを用いた管理を行っている。
従来の建築工事では、意匠図・構造図・設備図を統合した2次元の施工用図面を作成し施工していた。しかし、高さ方向で部材の位置が被っている場合などは、不整合が見分けにくいという課題があったという。
一方で、BIMモデルは施工に必要な情報を収納し、3次元で可視化するため、不整合の確認などに向いてはいるものの、2次元の施工用図面で利用するには、煩雑な作業を伴っていた。変更の都度、施工用図面とBIMモデルの両方を更新しなければならず、担当者に負荷がかかり、BIMの一貫利用を阻害する大きな要因だった。
今般、大林組ではBIMモデルに必要な情報を更新するだけで、施工用図面として抽出・表示・伝達できる手法を確立し、「次世代型生産設計図」と位置付け運用を開始した。これにより、BIMモデルの情報は施工用図面に直接反映されるため、施工用図面の修正作業は無くなる。加えて、BIMモデルには設計情報と生産情報を集約しているため、監理者や施工者、協力会社といった利用者ごとに、必要な生産情報を直接視覚化(図面化)して伝えられるようにもなる。次世代型生産設計図を利用することで、「BIMモデルを主体とした」一貫性のある実務運用が実現するとしている。
具体的には、次世代型生産設計図では、建築構成部材や個々に必要とされる生産情報は、あらかじめBIMモデルに盛り込む。そのうえで、施工用図面として部材の外形情報や部材間の位置関係に関する情報など、BIMモデルから直接引用して表示。また、BIMソフトのタグ表示機能で、仕様に関する情報も選択し示すこともできる。
タグによる情報表示では、必要な情報を整理し、監理者や施工者、協力会社など、工事関係者ごとに必要とする情報を適した様式に構成し直して提供する。設計情報と必要な生産情報を標準化したことに加え、施工の段階や工種ごとに必要な情報を分析・分解し、目的別に分類整理している。
次世代型生産設計図は、BIMモデルの生産情報をタブレットに表示するため、1フロア全体を1枚の全体図として管理する。立体を斜め上から見たアイソメトリック図などを用いて視覚的にも分かりやすく表現しているので、施工のイメージがしやすい。従来のA1サイズなどの紙に印刷することを前提とした縮尺分割図の様式や表現形式にしばられることが無く、紙の図面からの脱却が見込める。
なお、大林組では、既に2020年度に着工した工事で、次世代型生産設計図を適用しているという。
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