複数ロボが連携する制御技術を技研本館に実装、清水建設:ロボット
清水建設は、建物内で複数のロボットがエレベーターに順番に乗り込み、ロボット同士が狭い通路を譲り合って通る統合制御技術を開発した。将来は、1棟のビル内で用途の異なるロボットを複数導入して、新たな総合的なサービスの提供を構想している。
清水建設はこのほど、エレベーターなどの設備と多様なロボットを共通のインタフェースで統合制御するテクノロジーを開発し、東京都江東区の同社 技術研究所本館に実装した。
高精度3次元点群地図を施設のBIMデータから自動生成する技術も確立
近年、国内では労働者の高齢化が進展するとともに、人手不足の問題が深刻化しており、解決策の1つとして、警備や清掃、案内、送迎、配送などの業務をロボットに置き換える技術が多くの業種で求められている。また、新型コロナウイルスの影響で、感染症対策の強化が求められていることもあり、今後、ロボットを用いた非接触型サービスのニーズが一層高まることが予想されている。
ロボットを活用した建物サービスは、既に導入事例はあるが、多くが単一フロア内での稼働を前提としたものにとどまっている。さらに、施設とロボットの連携機能は、サービスごとにそれぞれ開発されるケースが少なくないため、建物内で複数のロボットサービスを同時に提供することが難しいという問題があった。
今回開発された、建物設備とロボットの統合制御技術は、従来の課題を解消。清水建設が研究を進めてきた自動運転プラットフォームのAPI(Application Programming Interface)を介して、車両やロボットの運行管理ソフトウェア、屋内の3次元点群データ、自動運転管制・監視システム、エレベーター制御システムを一元的に管理し、各フロアで稼働する多様なロボットを連携させる。
ロボットの連携テクノロジーを採用した技術研究所本館では、エレベーター1台と、自動運転プラットフォームの共同研究会社ティアフォー製物流用ロボット「Logiee」やNECネッツエスアイが販売する案内ロボット「YUNJI SAIL」を自動運転プラットフォームに接続。2種類のロボットが建物の上下階を自由に移動しながら、同時並行でサービスを提供可能なことを実証した。また、統合制御技術と併せて、ロボットが自己位置推定に使用する3D地図を施設のBIMデータから自動生成する技術も確立した。
新技術の利点は、サービス事業者がロボットと建物設備の連動システムを開発する必要がなくなるため、ロボットを使った新サービスの展開が容易になり、ユーザーの利便性と施設価値の向上につなげられる。
今後は、新技術で統合制御を行う建物設備やサービスロボットの拡充を目指し、ロボットサービス事業者などに共同実証への参加を働きかけていく。
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