「一般職業紹介状況」に見る建設技術者の転職動向、2月に求人倍率が4年8カ月ぶりに前年割れ:建設業の人材動向レポート(20)(2/2 ページ)
本連載では、ヒューマンタッチ総研が独自に調査した建設業における人材動向をさまざまな観点からレポートしている。今回は、「一般職業紹介状況(職業安定業務統計)」の最新データから転職市場の動向を紹介する。
■建設技術者の有効求人倍率は6.69倍で、主要な職種の中で最も高い
次に、主要な職業別に有効求人倍率(常用、パート除く)の推移を見ると、「建築・土木・測量技術者」が2013年の3.36倍から2019年には6.69倍にまで急上昇し、最も人材不足が厳しい職業となっている。
一方、「医師、歯科医師、獣医師、薬剤師」は、2013年において有効求人倍率が7.73倍で最も高かったが、2019年には4.93倍にまで低下した。
■ハローワークで建設技術者を採用するのは困難な状況
「建築・土木・測量技術者」のハローワークでの就職件数と充足率※2の推移を見ると、就職件数は2013年の1万7631人から2019年には9534人に減少し、充足率も2013年の8.2%から2019年には4.0%に低下しており、ハローワークで「建築・土木・測量技術者」を採用することは年々難しくなっている。
※2 充足率とは求人に対してどの程度の採用が見込めるかを数値で表したものであり、就職件数を新規求人数で割ったものである
■2020年2月、建設技術者の有効求人倍率が4年8カ月ぶりに前年同月を下回る
月別に建設技術者の有効求人倍率の推移を見ると、2019年12月に過去最高の7.50倍に達した後、2020年1月は6.86倍、2月は6.65倍となっている(図表5)。
有効求人倍率の前年同月比増減を見ると、2015年6月の前年同月比0.03ポイント上昇から連続して前年同月を上回り、2016年10月と12月には同1.03ポイント増と大幅な上昇になっていたが、2020年1月には同0.04ポイント増と上昇幅は一気に小さくなり、2月には同0.13ポイント低下と、実に4年8カ月ぶりに前年同月を下回った(図表6)。年々逼迫(ひっぱく)してきた建設技術者の需給ギャップはここにきて踊り場を迎え、今後については、新型コロナウィルス感染拡大の影響もあり徐々に緩和されていくのではないかと推測される。
■まとめ
厚生労働省の「一般職業紹介状況(職業安定業務統計)」を調べることで、雇用環境を判定するために重要な指標である有効求人倍率を全体平均だけでなく、職業別にも把握することが可能であり、月別に数値の推移を分析することで雇用環境変化の大きな傾向を把握することができ、将来についての推測も可能になる。
ただし、「一般職業紹介状況(職業安定業務統計)」で公表される有効求人倍率は、ハローワークに登録している求職者と求人を出している企業だけを対象としており、有料職業紹介所やインターネットなどで転職活動をしている人は対象としていない。そのため、正確には転職マーケットの動向が反映されていないこともあり得ることに注意しなければならない。
著者Profile
ヒューマンタッチ総研(所長:高本和幸)
ヒューマンタッチ総研は、ヒューマンホールディングスの事業子会社で、人材紹介事業を行うヒューマンタッチが運営する建設業界に特化した人材動向/市場動向/未来予測などの調査・分析を行うシンクタンク。独自調査レポートやマンスリーレポート、建設ICTの最新ソリューションを紹介するセミナーなど、建設業界に関わるさまざまな情報発信を行っている。
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