働き方改革に2.4億円を計上、5年連続6兆円超え国交省の2020年度予算概算要求:産業動向
ヒューマンタッチ総研は、2020年度の国土交通省予算概算要求から予測した建設市場の動向についてのレポートをリリースした。概算要求のうち、公共事業関係費は、2019年度予算比で19%増加して6兆2699億円となった。中でも防災・減災対策、国土強靭化、インフラ老朽化対策などが前年度予算を大きく上回った。加えて、働き方改革の推進やi-Constructionなどの予算も増加されているため、労働環境の整備が進むことが予測される。
ヒューマンタッチが運営するヒューマンタッチ総研は2019年9月13日、独自に分析した「2020年度の国土交通省予算概算要求から見る建設市場」を発表した。
■公共事業関係費は6年連続で、6兆円超え
国土交通省が2019年8月28日に発表した「2020年度予算概算要求」における公共事業関係費の要求額は、6兆2699億円(前年度予算比119%)だった。概算要求における公共事業関係費の要求額の推移を見ると、2015年度以降は6年連続
で6兆円を超えており、2020年度も引き続き、公共事業関連予算を安定的に確保する姿勢が明確化された形となった(図表1)。
■防災・減災、国土強靭化、社会インフラ老朽化対策に大幅な予算計上
主な予算要求項目では、近年、頻発している集中豪雨や地震などの自然災害への対策として、「『水防災意識社会』の再構築に向けた水害対策の推進」に5623億円(同130%)、「地域における総合的な防災・減災対策、老朽化対策などに対する集中的支援」に1兆2611億円(同121%)、「集中豪雨や火山噴火などに対応した総合的な土砂災害対策の推進」に1167億円(同123%)など、防災・減災や国土強靭化への取り組みに前年度予算を上回る金額を計上した(図表2)。
■老朽化マンション対策で新規事業
また、日本国内における社会インフラの老朽化が急速に進むことを背景に、「将来を見据えたインフラ老朽化対策の推進」に5827億円(同119%)を要求しており、道路、橋梁(きょうりょう)、トンネルなどの社会インフラのメンテナンスに持続的な予算を確保していく姿勢が示された予算編成となった。
住宅対策関連では、今後急増する老朽化マンション対策として、「老朽化マンション再生モデル事業」に20億円(新規)を要求。「空き家対策総合支援事業」にも50億円(同152%)を求めるなど、既存ストックを活用するための事業支援を強化している。
■働き方改革の推進、担い手確保に向けて前年を大きく上回る予算を要求
この他、「建設産業の働き方改革の推進」に2億4100万円(同232%)、「誰もが安心して働き続けられる環境整備」に2億800万円(同449%)、「建設分野における外国人受け入れの円滑化・適正化」に2億7000万円(同121%)など、働き方改革の推進や、建設業の担い手確保に向けて、前年度を大きく上回る予算を要求している。
ヒューマンタッチ総研所長・高本和幸氏は、「2020年度の国土交通省の予算概算要求によると、公共事業関係費で5年連続の6兆円超えの要求額となり、防災・減災、国土強靭化、老朽化した社会インフラ対策を中心に、安定的に公共事業費を確保しようとする姿勢が鮮明になっている」と分析。
2020年9月に東京オリンピック・パラリンピックが終了した後は、「建設業を取り巻く市場環境の不透明感が増しているが、公共事業関連の建設需要については底堅く推移するのではないか」と推察する。
また、「働き方改革の推進、建設業の担い手確保に向けての対策にも、前年度を上回る予算要求がなされた。2020年から2030年の10年間で、生産年齢人口が約530万人減少すると推計(国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口(出生・死亡中位推計)」)されていることを踏まえると、建設業界において量的・質的に必要な人材を確保していくためには、働き方改革の理念を理解して、労働環境の整備を強力に推進することが重要になる」とコメントしている。
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