仙台駅東口に国内初“製材”を採用した高層建築、木造ビルのランドマークに:プロジェクト
木質構造部材の研究・設計を手掛けているシェルターは、宮城県仙台市の仙台駅東口エリアで、日本で初めて主要構造部に製材を採用した高層木造建築を計画している。2020年5月に着工し、2021年春の竣工を目指す。完成すれば、地元の木材を使い全国に先駆けた汎用性の高い木造ビルのモデルケースとなる。
シェルターは2019年11月19日、JR「仙台」駅の東口エリアに、純木造の7階建てビルを建設する「(仮称)仙台駅東口プロジェクト」に着手することを発表した。新設ビルは、日本で初めて主要構造部に製材を使用した高層木造建築になるという。
「現在の建築物を木造に」木造都市の実現に向けたプロジェクト始動
国土交通省の「2018年度建築着工統計調査」によると、全国における建築物の階数分布は、1〜5階建てまでが99.1%、東北地方に限定すると99.7%にのぼる。シェルターでは、このプロジェクトによって、現在の建築物のほとんどを木造にすることが可能になることが示せ、標ぼうする「木造都市の実現」に向けて大きく前進することを期待している。
また、計画地は、仙台駅の東口ペデストリアンデッキから視認できる立地のため、駅の利用者などに木造ビルを広く認知してもらえるともしている。
プロジェクトでは、一般流通材であるJAS製材を主要構造部に採用。日本全国どの地域でも、地元の木材で高層ビルを建てられる技術を整備する狙いもある。
一般的に木造の高層建築は、集成材を使うが、集成材工場の整備状況は地域差があり、近隣に工場が無い地域では、地元の木を集成材工場に運び、また戻すという運搬費がかかってしまう。しかし、その点、製材であれば集成材に比べ、コストがかからず、どこの地域でも調達がしやすい。
今回、製材での高層建築を実現するため、複数の製材を束ねて柱や梁(はり)を製作。束ね材を用いた実例は少なく、高層建築の主要構造部への採用は初めての試みだという。1〜3階は2時間の耐火構造、4〜7階は1時間耐火構造で、柱/梁は国土交通大臣認定を取得した木質耐火部材「COOL WOOD(クールウッド)」を採り入れている。木材は国産のスギ、カラマツを使用し、東北の木材を積極的に使う。
(仮称)仙台駅東口プロジェクトの概要は、建築主は郄惣、設計・施工はシェルター。用途はテナント、オフィス、専用住宅。
建設地は宮城県仙台市宮城野区榴岡2丁目で、敷地面積は245.39平方メートル。地上7階建て(最高高さ26.52メートル)、延べ床面積は1029.40平方メートル。工期は2020年5月〜2021年春の予定。
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