三井住友建設は2020年3月4日、同社が開発した工法「プレストレスト木質構造」の設計法を確立したと公表した。設計法を構築するために、実物件への適用に向けた構造性能の確認実験や評価と分析を行った。
優れた耐震性能
近年、環境への配慮から木材の活用が注目されており、木質構造の適用範囲を中規模建築物へ広げることが期待されている。
三井住友建設は木材活用の需要を考慮し、、橋梁(きょうりょう)分野で培ってきたプレストレス(ピアノ線などのPC鋼材を用いて部材にあらかじめ導入する圧縮力)技術を木質部材に応用し、単一の木質部材であってもオフィスや商業施設などで、大スパンによる大空間と大開口を実現するプレストレスト木質構造を2018年に開発した。
工法の開発後、プレストレスを導入した木質部材の構造性能試験や梁(はり)の曲げ耐力試験などを実施。木材のクリープ特性や接合部の構造性能評価を進め、実用化が可能な設計法を築き上げた。
三井住友建設は、新設計法を適用した建物のイメージを提示している。建物の構造は木造地上2階建てで、延べ床面積が2500平方メートルで、高さが11メートル。最大スパンが11メートルで、用途は事務所と食堂。
特徴は、プレストレスを導入した木質部材とラーメン構造で、約11メートルの大スパンで自由度の高い大空間と外周部に壁のない開放的な建物を創出したこと。また、PC鋼材を柱梁(ちゅうりょう)接合部(RC造)に貫通させて緊張させることで、梁が柱に圧着し、大地震時に、PC鋼材がフレームで生じる変形を元の位置に戻す力(復元機能)を発揮するため、優れた耐震性能として機能する。
今後、三井住友建設は、保有する施設に新工法を適用し、設計法や施工法をさらに整備し、サスティナブルな中大規模建築物への適用に取り組み、CO2排出量が少なく環境に優しい安全で安心な社会の実現に貢献していく考えを示している。
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