【新連載】アズビルが解き明かす「BAS」徹底解剖!「BAS/BEMS/自動制御」誕生の歴史とその全体像:アズビルが解き明かす「BAS」解体新書!(1)(2/2 ページ)
建物には、空調、照明、監視カメラなど、さまざまな設備機器が導入されている。それらを効果的に運用するシステムとしてビルディングオートメーションシステム(Building Automation System、BAS)が存在する。本連載では、制御・計測機器メーカーで各種ビル設備サービスを展開するアズビルが、「建物の頭脳」ともいえるBASやシステムを活用したエネルギー管理システム「BEMS」を紹介し、今後の可能性についても解説する。第1回目はBASを中心にBEMSも含めたビルシステムの全体像を明らかにする。
BASとDDCの連携で、ビルに付加価値をもたらす機能が拡充
1990年代前後、日本がいわゆるバブル景気に湧いていた時期は、ビルに付加価値を持たせようとした時代でした。インテリジェントビルというキーワードで、建物居住者の快適性・利便性を高めるために、BASの機能が充実していきました。
例えば、電話を使った「温度設定値変更」や、オフィス内に設置したユーザーオペレーション機器による「空調残業運転の設定」、セキュリティ入退室管理システムとの連携による「空調/照明の入切」などが挙げられます。これらは、BASとDDCの通信による連携が可能になって、初めて実現できた機能です。この時代に生まれた発想・技術が、現代にも生かされているといえるでしょう。
時代が下って1990年代後半になると、インターネットやWeb技術の進展に応じて、中央監視装置にはWebサーバ機能が備えられ、ネットワーク上の任意のクライアントPCから、監視操作を行えるシステム形態が一般化してきました。また、「通信のオープン化」がキーワードとなって変化を遂げました。
BASのWeb化・通信のオープン化要求と、ほぼ時を同じくして、1997年12月に京都で開催された「気候変動枠組条約第3回締約国会議(COP3、京都会議)」では、先進国及び市場経済移行国の温室効果ガス排出の削減目的を定めた京都議定書※1が採択され、エネルギー削減目標が具体的に数値化されました。
また、翌1998年には「省エネルギー法」が改正されました。第1種エネルギー管理指定工場制度の新設、エネルギー使用状況の記録義務、中長期計画の提出義務などが、主な改正内容でした。工場以外の建物所有者にも、各建物の消費エネルギーを、正確に把握する必要が出てきたのです。エネルギーを正確に把握するということは、大規模ビルには、電気/ガス/水などの各種メータが散在しており、人手による計測/計量の記録は、膨大な時間がかかります。
そこで登場するのが、冒頭で紹介したBEMSであり、BASのデータを利用して、EMS(エネルギー管理)を実施しようという変化でした。エネルギー管理は、ただ単に計測/計量するというだけでなく、継続的に把握する必要があり、数値だけでなく目的を明確にしたグラフ化(見える化)が重要視されます。
※1 「気候変動に関する国際連合枠組条約の京都議定書(略称:気候変動枠組条約京都議定書)」の和文テキスト 外務省リンク
以上のような過程を経て、BASとBEMSは進化を遂げてきました。
そして、現在では、建物内の各種空間を自動的に快適な状態に保ちつつ、熱源機・空調機器を必要最小限のエネルギーで運転する省エネルギーの実現が可能になりました。
また、当然ですが、中央監視室には監視PCと大型LCDパネルが設置されている程度のシンプルな構成で、省力化(一元管理)も可能となっています。
一方で、ライフサイクルの短いIT機器を、建物設備の中で長期間にわたって維持することの難しさも存在しています。
近年では、情報系アプリケーション分野において、クラウド技術の活用が進んでいますが、BEMS機能の領域でも、クラウドによる管理系アプリケーション機能の提供や、クラウドにあるコンピュータリソースを活用した、最適設定値や最適制御パラメータ算出への応用などが期待されています。
次号では、BEMSの「クラウド化」について紹介する予定です。
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