“大阪”不動産市場の行方、2030年までに万博とIRがどの程度追い風になるか?:産業動向(2/2 ページ)
CBREは、2030年までの大阪不動産マーケットが、万博とIRによってどのように影響するかを考察するレポートをリリースした。活発なオフィスニーズを受容する梅田を有するキタ、心斎橋にリテーラーの新規出店ニーズが一段と集中しているミナミ、そしてIRの有力な候補地とされる夢洲の3カ所が、インフラ整備の進展とともに、相乗効果で事業用不動産の中心地になるとみている。
御堂筋のハイストリート化が加速
インバウンドに関しては、大阪への訪日外客数は、本格化する前の2011年に140万人だったのに対し、2018年(推計)は1140万人とおよそ8倍にまで膨れあがった。この数字は、同期間における全国の訪日外客数増加(621万人から3119万人に5倍の増加)を大きく上回っている。けん引役となったのが「心斎橋・難波エリア」だ。
御堂筋沿いの心斎橋界隈(かいわい)には、ラグジュアリーブランドの旗艦店舗が集積し、沿道の銀杏並木とともに高級感のあるハイストリートを形成している。近年は、日本人に加えて外国人旅行者の往来が増加しているために、店舗の新規出店ニーズが増えている。今後、控えている複数のプロジェクトは、御堂筋のハイストリート化をさらに促進する。
2018年3月に大阪市が発表した「御堂筋歩道化構想」では、2025年の万博開催までに現在の6車線のうち側道2車線を開放して歩道空間とし、2037年には車道を全て歩道化する。フランス・パリのシャンゼリゼ大通りを意識し、御堂筋を世界中から人を呼び寄せる目抜き通りにする計画だ。
これに併せ、民間でも2019年9月オープン予定の「大丸心斎橋店本館 建て替え」、2021年2月の「W OSAKA」、2020年代半ばの「心斎橋プラザビル/心斎橋フジビル」の開業が予定されている。
大阪万博の不動産市場への影響については、オフィスセクターは、万博をビジネス機会と考える企業による新規開設や拡張ニーズの増加が後押し。とりわけ、今回の万博のテーマに関連性の高い医薬・製薬業やAIをはじめ最新のテクノロジーを手掛ける企業の需要は高まる。リテールならびにホテルセクターは、訪日外国人のみならず国内旅行者の増加によって、さらなる需要創出が期待される。
一方で統合型リゾート(IR)の不動産市場への影響は、旅行者の大幅な増加により、リテールならびにホテルセクターには直接の恩恵がもたらされる。オフィスセクターも一定の需要増。大阪市の試算によると、建設を除く雇用だけで年間8〜13万人の創出効果を見込む。既に大手建設業では、夢洲の万博・統合型リゾートに向けたチームの新規開設や人員拡大の動きがみられ、不動産業についても、新たに開発される事業用不動産で施設管理や運営が求められると予測している。
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