日本郵政グループの本社機能移転「4社計6000人が大手町へ引っ越し」、CBREがマネジメント支援
CBREは、日本郵政グループから受託した本社機能の集約/移転に関する“プロジェクトマネジメント支援業務”がこのほど完了したことを明らかにした。プロジェクトでは、4社合計6000人もの大所帯が、50年ぶりに霞が関から大手町へと引っ越しを遂げた。
国内外で事業用総合不動産サービスを行うCBREは、日本郵政グループより受託した本社機能移転のプロジェクトが2019年2月に完了し、このほどプロジェクトをまとめたレポートを公表した。同プロジェクトは、日本郵政グループ4社(日本郵政、日本郵便、ゆうちょ銀行、かんぽ生命保険)の従業員約6000人が、「大手町プレイスウエストタワー」の新本社へ移転するもので、国内有数のビジネスエリアへ会社機能が移ることに併せ、従来型の脱官僚体質と新たな企業文化の創出を目指した。
CBREは基本計画段階から参画、設計から働き方改革まで支援
郵政グループの本社機能移転プロジェクトでは、CBREは2015年1月に日本郵政グループより、本社機能の集約/移転に関する“プロジェクトマネジメント支援業務”を受注した。
計画では、東京の千代田区霞が関の郵政ビル周辺で、8拠点に分散していた日本郵政グループ4社の本社機能を2018年8月に竣工した新築大型ビル・大手町プレイスウエストタワーに集約。2棟あるうちの「ウエストタワー」の3階と6〜24階の総延べ6万平方メートルが、日本郵政グループの新たな本社拠点となった。
CBREは、集約移転計画で、基本計画段階から参画し、ワークプレース、調査分析、スケジュール管理、設計マネジメント支援、品質管理、引っ越しマネジメント、働き方改革支援などの多岐にわたり、プロジェクトの推進をサポートしてきた。グループ各社の新オフィスの特徴となっているオープンでフラットな執務空間やユニバーサルレイアウトの導入などについても、アドバイスを行いながら、全体のコントロールと完遂に貢献した。
霞が関のビルでは、人員増による物理的なスペース不足をはじめ、合理性を欠いたオフィス運用、それに社員へのホスピタリティや快適性が損なわれていることが課題だった。移転計画は2007年から検討が始まり、遁信ビル跡地に建設が予定されていた大手町再開発ビルへ、正式に移転先を決めたのが2013年。翌2014年には日本郵政の総務部内に、「本社移転推進事務局」を開設するとともに、「本社移転推進本部」を立ち上げた。
新本社では、役所以来の窓際席を廃止し、オープンでフラットな執務空間とした。窓際はコミュニケーションスペースゾーンや集中スペースなど多様な用途で利用できるエリアとして開放。不足していた会議室やリフレッシュ空間は、適切な部屋数を整備した。
同時に大胆なペーパレス化にも着手し、それまで4社平均で、一般的な会社のおよそ3倍となる1人当たり8.5fm(ファイルメーター)もあった書類量を8割削減して、1人当たり1.7fmまで減らしたという。
また、社外の来館者も利用できる食堂や会議室は、郵政らしさを感じられる空間づくりを意識。切手をモチーフにしたグラフィックや室名サインに郵便番号を振るなど、遊び心を加えた。
近年は、大規模ビルでは当たり前になってきている“BCP対策”は、全国各地の郵便局とネットワークでつながった「危機管理専用室」を常設。コージェネレーションシステムと非常用発電機で、平常時の8割の電力を賄えるようにしてあり、災害時でも事業継続性を保持。帰宅困難者3000人を収容可能な防災備蓄倉庫も備えている。
プロジェクトを統括した日本郵政 本社移転推進室室長の齋藤隆司氏は、「2018年9月から実質2カ月で行った引っ越しは、毎週末に平均800人を動かす超スピード大型引っ越しとなった。万全の準備と社内外の協力体制が本社移転を成功させる鍵で、CBREの全面的サポートと綿密なチームワークなくして実現することは不可能だった。新たな本社では、グループ間の垣根が取り払われ、新たなシナジーと躍動感が生まれている」とコメント。
CBREで担当部署となったグローバルワークプレイスソリューションズ プロジェクトマネジメント部のシニアプロジェクトマネジャーの笹田森氏は、「集約移転計画の初期段階からプロジェクト完了まで携わることができた。約4年をかけて、4社の異なる企業に対するさまざまな要件をまとめ、約6000人の社員を什器(じゅうき)、書類とともに、2カ月間で動かすという大規模プロジェクトを本社移転推進室と連携し、遅延することなく完了させられた」と話す。
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