境町のドローンフィールドを仮想空間に再現 スペースデータとACSLが現場投入前に事前検証:ドローン
スペースデータとACSLは、ドローン実験施設をデジタルツイン化し、仮想環境上で開発/検証したドローンの制御や認識の機能を、国産機「SOTEN(蒼天)」の実機に搭載して検証した。インフラ点検などで実機投入前の事前テストが可能となり、無人機運用の安全性と効率性を大幅に高められる。
スペースデータとACSLは2026年10月20日、ドローン実験施設を丸ごと再現したデジタルツイン環境を構築し、仮想空間上で開発したドローンの制御機能をACSLの国産産業用小型ドローン「SOTEN(蒼天)」に連携させる実証を実施したと発表した。
仮想空間での飛行/認識の検証を経て、実機「SOTEN」へ連携
両社は防衛、防災、社会インフラ維持の分野で無人システム運用の高度化を目指し、共同で技術検討を進めている。今回の取り組みでは、スペースデータの統合技術基盤「PROVIDENCE(プロヴィデンス)」が持つデジタルツイン生成技術とフィジカルAI技術、ACSLが持つ実環境下でのドローン運用知見を融合し、仮想環境での飛行/認識/制御の検証から実機評価までをつなぐ検証プロセスを構築した。
実証の第一歩として、茨城県猿島郡に位置する「境町ドローンラボ・ドローンフィールド」の各種施設と周辺環境を3DCGで完全再現。建物の外観を模倣するだけでなく、ドローンの飛行経路、カメラ視野、対象物の認識、環境条件による差異を検証できる「運用のための仮想環境」として整備した。検証対象には飛行場、離着陸地点、施設建物、人物モデル、色マーカーなどを含み、現地と仮想空間で可能な限り同じ条件を設定できる構成を目指す。
3DCGは施設形状だけの再現ではなく、飛行や認識試験に必要な物理演算や気象環境を組み込めて、実際に空間内を移動するような操作もできる。デジタルツイン画像(左)、現地の画像(右) 出典:スペースデータ、ACSLプレスリリース
また、高度な物理シミュレーションを可能にするロボティクス開発プラットフォーム「NVIDIA Isaac Sim」上に、SOTENの機体モデルを生成し、地上局ソフトウェアなどの操作系と接続。地上局ソフトウェアから送る離陸、地点指定飛行、旋回、着陸などの指令をデジタルツイン上の機体に反映できる環境とした。さらに、ドローン搭載カメラの映像を取得し、画像処理結果を運用画面へ返す経路も整えた。
現在は、色マーカーを探索して推定位置へ接近し、その上空でホバリングする機能の他、人物を探索して安全距離を保ちながら監視位置でホバリングする機能の開発に着手している。仮想環境では、天候、時間帯、照明条件を任意に変更可能なため、現実世界では反復しにくい悪条件下を安全に検証し、実機試験で確認すべき論点を事前に絞り込める。
実機接続では、仮想空間で開発を終えた制御機能を用い、SOTENへの指令送信、カメラ映像の取得、ジンバル制御を検証した。さらに、シミュレーション環境で開発した色マーカー探索機能を実機へ接続し、自動離陸、実機映像を用いた対象検出、ホバリング判定までの自動制御と、手動着陸を組み合わせた一連の動作を確認した。検証過程では、映像遅延、カメラ画角、ジンバル角度の制約、通信状態など、シミュレーションと実機の差異に起因する課題を抽出し、改善を重ねている。
境町ドローンラボ・ドローンフィールドでは、実機とシミュレーションに同一または同等の探索条件を設定し、飛行軌跡、対象物の検出、最終位置、映像、通信/制御ログなどを比較する。色マーカー探索と人物探索を複数回実施し、日照、風、GPS品質などの環境条件も記録することで、実運用に影響する差異を定量的に把握する。
企業や自治体の実環境を対象とした共同検証へ展開
建設業界やインフラ維持管理の現場で、無人機活用は不可欠なものとなっている。橋梁(きょうりょう)、送電線、プラント施設など、墜落リスクを伴い環境再現が困難な現場での実機テストは多くの課題を抱えている。デジタルツインを活用した事前検証プロセスを導入すれば、現場投入前のリスクを極小化し、撮影や点検計画の精度を飛躍的に向上できる。
両社は、仮想環境のシミュレーション結果と実機データを比較し、機体モデル、カメラ/センサーモデル、通信、環境条件、認識/制御アプリケーションの精度向上につなげる。今後は、建設領域では工事進捗の撮影計画や死角、飛行禁止領域、点検頻度を仮想環境で設計するなど、企業や自治体の現場課題に合わせた共創型の検証プログラムを展開し、無人機運用の社会実装を加速させる。
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