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電気設備設計の暗黙知をAIで自動化、関電工×Arentの自動設計システム:設備設計BIM(2/2 ページ)

関電工とArentは、BIMデータを基に電気設備の概算や設計を自動化する独自システム「VOLDAR」の運用を開始した。熟練者の暗黙知をロジック化し、これまで数週間を要していた図面作成を1時間に短縮する。

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 VOLDARの主な機能の1つが、「幹線根拠図」の作成支援機能だ。建築BIMモデルから取得した建物情報と、電気設備設計に必要な知見、法規、実績データを統合し、幹線設備平面図、幹線設備系統図、単線結線図、配電盤表、動力制御盤/電灯盤の負荷リスト、技術計算書などを自動作成する。

 電気設備の基本設計支援では、法規や設計ルールに準じて、非常照明、誘導灯、コンセント設備、放送設備、TV/電話/LANなどの配置を自動化。部屋特性を考慮した分電盤/変圧器の自動配置、負荷容量からの分電盤/変圧器容量の自動選定、自動ルーティングによる幹線ルートの自動生成、受電方式や設備構成に応じた単線結線図/系統図の自動作成など、電気設備設計の一連の工程も全て自動化できる機能を備える。

 前述した通り、概算業務や設計業務は設計者の経験に依存する部分が多く、属人化の進みやすい要因にもなっている。VOLDARであれば、誰が作成しても標準的な基本設計根拠を短時間で出力できる。設計品質の標準化や均質化を実現し、業界が抱えていた課題を一挙に解決するシステムだ。

「VOLDAR」の「幹線根拠図作成支援機能」と「電気設備基本設計支援機能」
「VOLDAR」の「幹線根拠図作成支援機能」と「電気設備基本設計支援機能」 提供:Arent
2つの機能のそれぞれの詳細
2つの機能のそれぞれの詳細 提供:Arent

自動設計で、635室159本の幹線を一瞬で接続

 説明会の中盤で谷口氏は、実際の設計プロジェクトを題材にした実演デモを披露した。主な流れは「入力」「自動設計」「出力」の3ステップだ。まず、ゼネコンから受け取った建物のBIMデータをそのまま読み込むと、部屋の名称や形状、面積、用途を自動で認識。地下1階から13階までの全635室を一瞬で読み取った。

自動設計機能を披露する実演デモ。自動設計機能を披露する実演デモ。RevitのBIMデータから必要な情報の自動読み取り
自動設計機能を披露する実演デモ。自動設計機能を披露する実演デモ。RevitのBIMデータから必要な情報の自動読み取り 提供:Arent

 続く電気設備の自動設計では、部屋の情報から照明やコンセントなどに必要な電気容量を自動生成した。分電盤は、部屋ごとに設置可否を自動判定した上で配置し、その名称や容量も自動で割り付けた。各部屋への電源供給経路や変圧器の容量計算も行い、最終的に計算書はExcelで出力可能だ。

 また、谷口氏は、変圧器から各分電盤までの幹線ケーブルを「自動ルーティング」するコマンドを実行し、159本の幹線ケーブルを一瞬で接続した。ルートの長さから、幹線の計算、ケーブルの太さ、複数のケーブルをまとめるケーブルラックの幅までも自動で算出し、建物全体の幹線設備平面図を瞬時に生成した。生成したルートは単なる図形データではなく、種別や仕様、接続情報などの属性情報をBIMオブジェクトに付与するため、今後の実施設計や施工フェーズへのデータ受け渡し、他設備との干渉チェックに活用できる。

 コンセントも全フロアの部屋の壁に自動で設置し、最終避難口を設定することで消防法の基準に準拠した非常スピーカーや避難口/避難階段の他、避難経路を自動解析して誘導灯も適正に配置する。

変圧器から各盤までをつなぐ幹線ルートを自動生成する「自動ルーティング」の3Dビュー
変圧器から各盤までをつなぐ幹線ルートを自動生成する「自動ルーティング」の3Dビュー 提供:Arent
コンセントの自動配置デモ。コンセントそれぞれに、種別や仕様などの細かい属性情報を持ち、BIMのオブジェクトに付与する
コンセントの自動配置デモ。コンセントそれぞれに、種別や仕様などの細かい属性情報を持ち、BIMのオブジェクトに付与する 提供:Arent
成果物として出力される幹線設備平面図
成果物として出力される幹線設備平面図 提供:Arent

 「従来はExcelや複数の図面を見比べながら作図する必要があったが、VOLDARであれば簡単に設計できる」と谷口氏。設計者は法的な設置基準の確認や手作業によるプロット業務から解放され、大幅な作業効率の向上につながる。従来は、複数人で数週間かけていた概算図面の作成が、1人で1時間程度に短縮できるという。

「VOLDAR」のデモ。「入力」「自動設計」「出力」の3ステップ 提供:Arent

2030年には、基本設計の自動化を目指す

 今後の展望として、岡田氏は「2030年までに一般的な建築物の電気設備基本設計の大部分を自動化する」という目標を示した。現在開発中の追加機能は、「単線結線図/幹線設備系統図作成機能のさらなる高度化」「発電機や直流電源装置などの仕様検討支援」「電気室機器配置図/電源供給状態図の自動作成」の3つだ。さらに将来構想として、「AIによる対話型設計支援」「AI設計レビュー」「施工BIMへのデータ連携」「積算システムとの連携」も視野に入れる。

 鴨林氏は、データが蓄積されればされるほど、AIの学習制度も高まっていく点に言及した。「自動化のあとのチェックなども、いずれはAIとの対話だけで完結できるようになるかもしれない」と展望を語った。

 その後の質疑応答では、2026年3月に関電工をはじめとする電気設備工事会社7社が、電気設備工事でBIMの標準化を目指す「電気BIM推進協議会」が発足したこともあってか、VOLDARを業界標準化する期待の声も上がった。岡田氏は、企業ごとの設備設計ノウハウは、それぞれの優位性を示す差別化領域にもなっている。VOLDARはあくまで関電工の技術に基づいて開発されているため、標準化は難しいのではないかとの認識を示した。しかし、「分電盤などの標準化できる部分は、業界で連携して進められる領域だ」と検討の余地も口にした。

 熟年の技術者による判断が要求されてきた設計ノウハウを自動化システムに組み込み、誰でも高い水準の設計を再現できるようにするVOLDAR。担い手不足と技術継承という業界課題の解決を担えるのか、今後の機能拡充にも注目が集まりそうだ。

2030年に向けた関電工の将来展望
2030年に向けた関電工の将来展望 提供:Arent

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