Autodesk副社長が語る「AIで描くから“判断する”へ」 Formaで実現するAIネイティブの建設プロセス:Design & Make Summit Japan 2026(2/2 ページ)
Autodesk副社長のニコラ・マンゴン氏は、データの分断を解消するクラウド環境「Forma」の進化とAIの躍進により、データ間の壁を解放し、AIが最適解のBIMモデルを自律的に提示する「アウトカムベースBIM」の構想を提示する。その先には、単純作業の自動化にとどまらず、AIが建設プロセスを回す抜本的なパラダイムシフトと、コストから価値提供へと変わる新たな建設ビジネスモデルへの移行をも見据える。
建設生産プロセス全体をデータで紡ぐ“デジタルスレッド”
グラニュラーデータ化により、情報はファイルや特定のアプリケーションやソフトウェアに縛られなくなる。BIMデータであれば、Revitで開始したプロジェクトのデータを変換やインポート/エクスポートの手間なく、Civil 3DやForma Design、サードパーティーのアプリケーションで、データ損失なく直接読み書きできるようになる。
また、設計段階のBIMデータにとどまらず、施工や維持管理のフェーズで必要な情報を取り出し、スケジュールや品質をリアルタイムで管理する“デジタルツイン”の情報基盤としての活用も見込める。
マンゴン氏は、「Forma Data Managementは計画から設計、施工、運用までの建設生産プロセス全体をデータで紡ぐ“デジタルスレッド(デジタルの糸)”として、ライフサイクルの中心に位置する。そのため、プロジェクトの意思決定の連続性を維持しながら、手戻りを削減し、収益性の改善にもつながる。また、プロジェクトごとにCDEを用意するのではなく、Forma Data Managementに全て統合して蓄積することで、次のプロジェクトを効率化する有益な知見も得られる」とその有用性を強調した。
さらに、「ファイルからデータを解放することで、AIも容易にアクセスし、パターンやトレンドを理解して自律的に処理することが可能になる」と、AIの情報基盤にもなり得る重要性を語った。
AIが「描く」から「判断する」へ。予測型AIの台頭AIの進化は凄まじい。
建設業界でのAI活用に関してマンゴン氏は、「動画生成AIがわずか2年で飛躍的に進歩したように、AECO業界でも同様の進化が起きている」と指摘。Autodesk製品には現在、複数のAIエージェント(アシスタント)を組み込んでいる。
AutoCADでは、自然言語で「図面のコンプライアンスをチェックして」と指示するだけでAIが意図を理解して実行する。Revitでは、「窓とファサードの割合を計算して」と指示するとAIが瞬時に計算し、さらに「窓の割合を増やして」と要求すれば、自動で窓のサイズを変更して追加する。AIを使用しない場合と比較して、窓の数を数えたり圧力のかかりすぎているパイプを特定したりする作業スピードは約3倍に跳ね上がるという。
建設のワークフローに対応したエージェントも多数開発している。「スケジュールエージェント」はプロジェクト全体のスケジュールを読み込み、リスクのある箇所を指摘してスケジュールを自動で再計算する。「リスクエージェント」はコストや施工業者の状況などプロジェクトデータを分析し、最大の潜在リスクを特定して提示する。
マンゴン氏は、AIの導入がもたらすプロセス変化について、「モデルベースBIM」に対する「アウトカムベースBIM」という概念を用いて説明した。
これまでのモデルを主体としたBIMは、設計や施工の各プロセスを順番に進め、人間が前の作業をチェックして修正する直線的なプロセスだった。だが、アウトカムベースBIMでは、達成すべきコストや工期など「成果目標(アウトカム)」をAIにまず与えることから始まる。
仮に設計初期段階で、「ネットゼロ(温室効果ガス排出実質ゼロ)を達成する2000人規模の学校を2億ドル以下で、2029年までに建設する」といった条件を設定すると、AIが交通渋滞や天候、地盤、専門委託業者、建材コストといった膨大なデータにアクセスし、条件を満たす具体的な建物のオプションを複数生成する。AIは風やエネルギー、音響などのシミュレーションも秒単位で実行し、設計者はその結果を比較検討して、成果目標(アウトカム)に最適な案を「選ぶ」役割へと変化する。
既にFormaには、AI機能とRevitをつなぐ「Forma Connected Client」を用意している他、Revit自体にもForma Site Design/Building DesignといったCFD(数値解析)の風環境シミュレーションなどができるFromaの体験版的な機能の搭載もしている。
こうしたAIの判断は、現実世界の多種多様なコンテキスト(関連情報)に基づくため、現実的かつ科学的な裏付けを持っている。マンゴン氏によれば生成されるBIMモデルのLOD(詳細度)は「まだ粗いが、将来はLOD300の精密なモデルも作成可能になる」とする。それだけの詳細度があれば、モジュラーコンストラクション(モジュール建築)への展開も可能となり、オンサイトまたはオフサイトの検討も、設計初期に実現する可能性も秘めている。
マンゴン氏は「一部の定型的なアセット(データセンター、倉庫、マンションなど)では、計画段階で設計や建設の計画がほとんど終わってしまうほど、プロセスが劇的に短縮されるだろう」と予測。「AIに仕事を奪われることを恐れるのではなく、AIを使いこなす競合他社を恐れるべきだ。未来の建設企業は、コストベースではなく、提供する価値ベースのビジネスモデルへと移行し、CDEを通じてクライアントと永続的な関係を築いていくことになる」と提言した。
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