BIM活用は積算から鉄骨製作モデルへ 帝国不動産、社外連携への挑戦:不動産デベロッパーのBIM導入事例(3/3 ページ)
顧客提案でのBIM運用率はほぼ100%、積算の最適化も実現――。BIM活用について社内で成果を上げた帝国不動産が次に挑むのは、「社外連携」だ。鉄骨加工会社とともに鉄骨製作モデルの実現を目指している。帝国不動産のBIM活用の次の一手を追う。
従業員100人以下のBIM導入率は44.8%
国土交通省が2024年度に実施したBIMの活用状況に関する調査では、回答企業全体の58.7%がBIMを導入していた。一方、従業員100人以下の企業に限ると導入率は44.8%にとどまり、企業規模による差もみられた。
帝国不動産でも、小規模な協力事業者とBIM活用で連携するには、導入費や人材育成などの壁があると感じていた。そこで、国交省によるBIM関連の補助事業を活用し、協力事業者の導入費などを支援している。
2024年度は国交省の「建築BIM加速化事業」を3件で利用。協力関係にある意匠設計事務所を対象に、BIMソフトやPCの導入、講習の受講などをサポートした。しかし、BIM導入に積極的な事務所ばかりではなかった。小規模な設計事務所にとって、壁となるのは初期費用だけではない。
建築本部 商品開発部 設計システム課 課長 石井宗弘氏は「初期コストに加え、慣れた方法から変えることへの抵抗感もある。操作を習得する間は作業効率が一時的に低下する。人数の少ない設計事務所ほど、既存業務と並行して習得する時間を確保することが難しい」と述べた。
使用するBIMソフトの違いも、連携先を広げるうえで壁となる。帝国不動産はArchicadを使用しているが、海外の設計外注先ではRevitを使用する事業者が多い。協力事業者がArchicadを導入しても、他社から受注する業務で活用できるとは限らず、導入のメリットを見いだしにくい。
BIM補助金活用のノウハウ、2025年度は59棟で申請
2025年度は、2025年5月1日から2026年2月28日までに計59棟で「建築GX・DX推進事業」を活用した。帝国不動産が初めて補助事業を利用した2024年度は、意匠設計事務所3社へのBIM導入支援に伴う3件にとどまっていた。翌年度に募集要領を読み直したところ、協力事業者への導入支援だけでなく、自社のBIMモデル作成費や社内の担当者の人件費なども補助対象になり得ると分かった。対象経費を洗い出した結果、申請物件は59棟に増えた。新たにBIM導入を支援した協力事業者は、鉄骨加工会社1社のみだ。
補助対象を広げられた一方、申請事務の負担は膨らんだ。物件ごとに申請する必要があるためで、帝国不動産は59棟分の書類をそれぞれ作成した。申請方法を習得するまでにも時間を要した。
中村氏は「初回は申請方法が何も分からない状態だった。事務局に何度も電話し、書類を提出しては差し戻しを受け、その理由を確認した。これを繰り返しながら申請方法を覚えていった」と当時を振り返る。
最初の申請を完了した後は、その書類を参考に他の物件の申請を進められるようになった。それでも、59棟分の書類をそろえる負担は大きく、申請期限が近づく年度末に作業が集中した。
特に手間がかかったのが、人件費の根拠資料の作成だ。BIM業務にかかった人件費を申請するには、担当者の作業時間に加え、給与情報を確認する必要があった。しかし、給与情報を閲覧できる役職者は限られており、設計システム課だけでは手続きを完結できなかった。このため、人事部門や上位の管理職にも協力を求めた。
2026年4月に始まった「BIM図面審査」の利用も検討している。現在は情報収集の段階で、今後、審査機関と協議した上で、まず1棟で申請を目指す。実際の審査期間や申請者側の負担を検証し、2029年春に開始予定の「BIMデータ審査」にも対応していく方針だ。
鉄骨製作モデルの実用化やBIM図面審査への対応など、帝国不動産のBIM活用は今も試行錯誤が続いている。
中村氏は「他社の事例もあまり表に出てこないため、自分たちが十分にできているのか、正直なところ今もなお暗中模索の状態だ。だからこそ、これから始める企業には、一人で抱え込まず、社内外の関係者と協力しながら取り組んでほしい」と締めくくった。
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