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「バーティカルAI」と「フィジカルAI」がけん引する建設DXの先の「土木AX」:“土木×AI”で起きる建設現場のパラダイムシフト(41)(2/2 ページ)

本稿では、人工知能基本計画は昨今の急速なAI進化を踏まえ、2026年7月にアップデートしました。その中で触れられている「バーティカルAI」「フィジカルAI」「AX(AIトランスフォーメーション)」の概念について、土木分野の最新AI研究を交えて解説します。

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AI for Scienceの観点から土木工学を再構築

 バーティカルAIのデータや判断を、現実世界を理解して行動を生成するフィジカルAI※5に取り入れ、現実世界で実行していくのが人工知能基本計画の構想です。

※5 阿部雅人「“土木×AI”で起きる建設現場のパラダイムシフト(39):土木×AIの「勝ち筋」とは? インフラや災害対応で進む“フィジカルAI”」『BUILT』2026年4月20日公開

 自動運転をイメージすると分かりやすいと思いますが、フィジカルAIを現実の世界に適用するには、どこが道路かなどの周辺状況を認識する必要があります。フィジカルAIのモデルは、AIが周辺の環境から情報を取得し、内部に世界のイメージを持つことから「世界モデル」と呼ばれ、事前に物理法則などを学習したものは「世界基盤モデル」とも呼びます※6。

※6 “Cosmos World Foundation Model Platform for Physical AI”Yogesh Balaji/arXiv:2501.03575/Submitted on 7 Jan 2025 (v1),last revised 9 Jul 2025 (this version,v3)

 土木でUAV(ドローンなどの無人航空機)を用いる場合は、点検や調査など、構造物や環境の情報を取得する目的のことが多く、「デジタルツイン」として、実空間をコンピュータ上に再現することが盛んに行われています。フィジカルAIで自律化することに加え、「世界モデルの考えをデジタルツインに取り入れる」ことでも、新たなイノベーションが起こり得るのではないかと期待が膨らみます。

 下図はUAVとAIによるダム点検の事例です。

3D復元技術と異常検知を統合したUAVによるダム堤体点検
3D復元技術と異常検知を統合したUAVによるダム堤体点検 出典:※7

※7 「三次元復元技術と異常検知を統合したダム堤体点検の効率化手法の検証」北村諒馬,石井明,七海友康,都築幸乃,繁田淳吾,権神侑貴/AI・データサイエンス論文集6巻1号p64-76/「科学技術情報発信・流通総合システム(J-STAGE)」/2025年

 AI for Scienceは、AIを組み込むことで科学研究の全過程を変革し、研究速度や探索範囲、再現性などを飛躍的に高め、従来は到達困難だった科学的発見を可能にするものです。2024年のノーベル化学賞は、「コンピュータによるタンパク質設計/タンパク質構造予測」でした。また、最近は数学の問題にもAIが力を発揮しています。土木工学をAI for Scienceの観点から再構築することが重要となるでしょう。

 AXとはAI Transformation(トランスフォーメーション)の略語で、「AIを前提として意思決定や業務の進め方を“根底から見直す”」ことを指します。時間がかかっていた事務作業などがAIで大幅に軽減される可能性がありますが、そもそも記録もAIが読める形であれば十分で、書類を作る必要自体がなくなるかもしれません。

 下図はBIM/CIMのデータ連携の考え方です。3Dモデルや2D図面は、人が確認する際に生成する位置付けとして納品を不要にし、情報モデルを連携する方針が示されています。

プロセス間のデータ連携
プロセス間のデータ連携 出典:※8

※8 国土交通省「第16回BIM/CIM推進委員会(2026年7月7日)」

 エージェント型AIやAIコーディングの発展によって、現場の具体的な問題を解決するAIの能力は飛躍的に向上しています。AIの開発から実装までの好循環のけん引役としても、土木でのバーティカルAIの発展に期待がかかります。

 国交省からも、「インフラ分野のAI実装に向けた取組方針(2026年9月4日公表)」※9や「建設分野におけるフィジカルAI戦略(中間とりまとめ、2026年9月4日公表)」※10が相次いで公表されています。

※9 国土交通省「インフラ分野のDX」

※10 国土交通省「建設分野におけるフィジカルAI戦略(中間とりまとめ)」

著者Profile

阿部 雅人/Masato Abe

ベイシスコンサルティング 研究開発室 チーフリサーチャー。防災科学技術研究所 客員研究員。土木学会では構造工学でのAI活用に関する研究小委員会、AI・データサイエンス実践研究小委員会の副委員長を務めた後、現在はAI・DX研究小委員会 副委員長。インフラメンテナンス国民会議 実行委員も兼任。

近著に、「構造物のモニタリング技術」(日本鋼構造協会編/コロナ社)。

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