BIMが一過性のブームで終わらないために Vol.3 「リアローディング」からの脱却【現場BIM第11回】:建設産業構造の大転換と現場BIM〜脇役たちからの挑戦状〜(11)(2/2 ページ)
当連載の第8回と第10回で、“フロントローディング”がバズワード化していないか、「BIM疲れ」を起こしていないかという問題提起を起点に、理想論を振りかざすのではなく“日本式”BIMの現実的な進め方、そして発注者の役割の重要性について述べた。今回は、時世の変化が一段と激しさを増す中で、さらに議論を深めていきたい。
発注者の“役割”の再認識
生産構造を変える上で、改めて重要になるのが発注者の役割だ。リアローディングからの脱却は、設計者や施工者単独で実現できるものではない。最終的な意思決定とリスクの所在を考えた場合、発注者の関与が不可欠なためだ。
近年の建設費高騰や不確実性の増大は、従来のように施工者がリスクを包括的に引き受ける前提を崩壊させている。既に幾多の報道で顕在化しているように、施工者はリスクを背負い込む余裕はなく、もはやその意志もない。結果的に施工者の収益性はV字回復を遂げ、さらなる成長軌道に乗って次のステージに移りつつある。その意味で、発注者自らがリスクを早期に把握し、プロジェクトの意思決定に深く関与する必要性は、これまで以上に高まっている。プロセス変革による最終的なメリットを享受するのは、他でもない発注者自身だ。目覚めよ発注者!
まずは「数量の見える化」にフォーカスを
発注者にとってはじめの一歩は、「何がどれだけ必要か」を早い段階で把握すること、すなわち“数量の見える化”と私たちは考えている。
2026年に入って、AIの技術進化が想像を絶するスピードでギアチェンジを果たした。これまで技術的に困難だと遠巻きに見られていた「正しい数量×フロントローディング」も一気に現実味を帯び、技術側面でも実現可能解となりつつある。
この部分は、当社が提供する「BuildApp(ビルドアップ)の重要なコンセプトでもあるが、詳細は次回以降で掘り下げていきたい。現段階では、プロセス変革に向けて全ての条件がそろってきた今、発注者が「いざ出陣」への頭の切り替えと心構えをしていただければ、それで目的は達する。
リアローディングの「進化」という捉え方
最後に強調しておきたいのは、リアローディングを単純に否定するべきではないという点だ。リアローディングは、日本の建設業が培ってきた合理性の一つで、一定の条件下では有効に機能してきた。
しかし、その成立条件が変化した現在、同じ形のままでは持続し得ない。求められているのは、「後ろで帳尻を合わせる」仕組みから、「前提を整えた上で進める」生産構造への移行だ。その過程では、どこまでを前倒しし、どこに柔軟性を残すのかといった現実的な判断がカギを握る。
そのためには発注者がほんの少しマインドチェンジし、設計者、施工者、専門工事、建材メーカーがそれぞれの役割の中で意思決定の在り方を見直し、小さな転換を積み重ねていかねばならない。BIMはそのための強力な手段であり、重要なポジションにあることは変わらない。
BIMを一過性のブームに終わらせるのか(もはやその選択肢はない)、それとも建設生産の在り方そのものの変革につなげるのか。日本の建設業界は今まさに、その分岐点に立っているといえる。
次の生産システムへの進化には、発注者含め、設計者、施工者、専門工事、建材メーカーの各ステークホルダーが意思決定の在り方を見直し、小さな転換を積み重ねていくことが不可欠 提供:野原グループPhoto by Pixabay
著者Profile
山崎 芳治/Yoshiharu Yamasaki
野原グループCSO(Chief Strategy Officer/最高戦略責任者)。
20年超に及ぶ製造業その他の業界でのデジタル技術活用と事業転換の知見を生かし、現職では社内業務プロセスの抜本的改革、建設プロセス全体の生産性向上を目指すBIMサービス「BuildApp(ビルドアップ:BIM設計―製造―施工支援プラットフォーム)」を中心とした建設DX推進事業を統括する。
コーポレートミッション「建設業界のアップデート」の実現に向け、業界関係者をつなぐハブ機能を担いサプライチェーン変革に挑む。
著者Profile
守屋 正規/Masanori Moriya
「建設デジタル、マジで、やる。」を掲げるM&F tecnica代表取締役。
建築総合アウトソーシング事業(設計図、施工図、仮設図、人材派遣、各種申請など)を展開し、RevitによるBIMプレジェクトは280件を超える。2023年6月には、ISO 19650に基づく「BIM BSI Kitemark」認証を取得した。
中堅ゼネコンで主に都内で現場監督を務めた経験から、施工図製作に精通し(22年超、現在も継続中)、BIM関連講師として数々の施工BIMセミナーにも登壇(大塚商会×Autodesk主催など)。また、北海道大学大学院ではBIM教育にも携わる。
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