BIMが一過性のブームで終わらないために Vol.3 「リアローディング」からの脱却【現場BIM第11回】:建設産業構造の大転換と現場BIM〜脇役たちからの挑戦状〜(11)(1/2 ページ)
当連載の第8回と第10回で、“フロントローディング”がバズワード化していないか、「BIM疲れ」を起こしていないかという問題提起を起点に、理想論を振りかざすのではなく“日本式”BIMの現実的な進め方、そして発注者の役割の重要性について述べた。今回は、時世の変化が一段と激しさを増す中で、さらに議論を深めていきたい。
フロントローディングならぬ「リアローディング」。千葉大学名誉教授の安藤正雄氏が、2025年末に「リアローディングからの脱却」というフレーズを論文の中で初めて使用したと聞く。2026年4月18日に芝浦工業大学主催の「DfMAシンポジウム」も同じテーマで開催され、小生も野原グループの取り組みの説明とパネルディスカッションに参加した。
フロントローディングというと、設計者に負担を寄せるようなイメージが先行し、設計・施工一貫(DB)で受注する案件でさえ、ゼネコン内部では反発がまだ強いようだ。それならば、「フロントローディングしよう」と叫び続けるよりは、「リアローディングをやめよう」と少し視点を変えるのは、良いピボット(方針転換)のようにも思える。
★連載バックナンバー:
『建設産業構造の大転換と現場BIM〜脇役たちからの挑戦状〜』
本連載では、野原グループの山崎芳治氏とM&F tecnicaの守屋正規氏が共著で、BIMを中心とした建設産業のトランスフォーメーションについて提言していく。設計BIMについては語られることも多いため、本連載では施工現場や建材の製造工程などを含めたサプライチェーンまで視野を広げて筆を進める。
日本の建設生産を支えてきた「リアローディング」
日本の建設業界では、設計や仕様、数量の決定を後工程に委ね、現場での擦り合わせを通じて完成度を高めていく生産の在り方が、長く一つの合理的な手法として機能してきた。これこそが、安藤先生が呼称した“リアローディング”の手法だ。
「リアローディングのプロセスは、結果的に合理的に機能してきた側面があった」と捉えることもできる。むしろ、現場の高度な調整力や技能者の成熟した技術力を背景に、日本の建築品質を世界トップレベルで支えてきた。一方で、特定の前提条件の上に成立していたともいえる。すなわち、仕様変更に伴うコストインパクトが相対的に小さい環境と、直前の変更にも柔軟に対応できる人的リソース基盤だ。
成立条件の変化という構造的な問題
しかし、現在はその前提が大きく揺らいでいる。技能者の減少、働き方改革の進展、資材価格の変動といった複合的な要因により、「後で決める」ことのリスクは相対的に増大している。こうした変化は、リアローディングという手法の優劣を問うものではなく、成立条件そのもののが失われた構造的な問題として捉える必要がある。
従来は柔軟性として機能していた後工程での調整が、今は不確実性を増幅させるリスク要因になりつつある。そのため、生産システム全体の再考が求められている。
フロントローディングの再定義
こうした状況下では、フロントローディングという概念に改めて注目すべきだ。ただし、その本質は単純な「設計の前倒し」ではない。重要なのは、「どの意思決定を、どの段階で行うのか」を根本から再設計することにある。言い換えれば、後戻りが困難となる意思決定を適切なタイミングで確定し、それを前提に生産プロセスを構築していく必要がある。
BIMも同様に、単なるモデリングツールとしてではなく、情報の確定と共有を前提としたマネジメントの枠組みとして捉えるべきだろう。すなわち、BIMの本質は「Modeling(モデリング)」ではなく「Management(マネジメント)」にあるといえる(前述のDfMAシンポジウムで教えていただいた)。
なぜ「脱却」は進まないのか
リアローディングからの転換が容易ではない理由として、技術的な課題以上に、構造的かつ制度的な要因が挙げられる。例えば、従来の建設プロセスでは設計・施工分離(DBB)や設計・施工一貫(DB)の方式を問わず、意思決定の上流化を支えるインセンティブが必ずしも明確ではない。
また、リスク分担の構造が曖昧なことも、意思決定の先送りを助長する原因となり得る。さらに、数量や仕様の早期確定に対する心理的な抵抗も無視できない。数量が可視化されることは透明性の向上につながるが、従来の商慣習との摩擦を生む可能性もある。
こうした多層的な背景が、結果として「リアローディング的な振る舞い」を温存していると考えられる。それぞれの課題を掘り下げたいところだが、今回は前回に引き続き、「リスク分担」を取り上げつつ、発注者の役割に切り込んでいく。
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