Revitの単純作業をAIが肩代わり ArentのBIM用「AIエージェント」が大規模刷新:BIM
Arentは建設業向けAIエージェント「LightningBIM AI Agent」の大型アップデートベータ版を公開した。AIがBIMモデル全体を把握し、自然言語の指示で、ワークセットの自動作成やメンションによる要素やパラメーターの指定といった複雑なタスクを自律的に実行する。
Arent(アレント)は2026年7月23日、建設業向けAIエージェント「LightningBIM AI Agent」の大型アップデートβ版をリリースした。LightningBIM AI Agentは、Arentが開発した「Autodesk Revit」連携型のAIエージェントだ。これまで専門技術者のみが扱えたBIMモデルの情報照会や操作をAIが自然言語で受け付け、モデル全体を横断して即座に回答やタスクを実行する。
今回のアップデートでは、BIMモデル全体の構造を把握した上で、高精度な検索や分析を可能にする機能を中核に据えた。さらに、複数ステップにわたる大規模タスクをAIが自律的に実行して検証する機能も追加した。現在は、既存の安定版と並存する形で提供を開始している。
「地図」をAIに持たせ、BIMモデル全体を事前に検索可能に
建設業でBIM活用が進む一方、3Dモデルへの情報照会やモデル操作は依然として一部の専門担当者に限られており、施工管理者や発注者、他職種のスタッフが主体的にモデルを活用できる環境は整っていなかった。
従来のLightningBIM AI Agentは、Revit上でAIによる自然言語での要素検索や操作を可能にしたきた。BIMの検索操作に不慣れでも、単一の検索窓から必要な情報にたどり着け、仮に「二階のスリーブを表示して」と入力すれば、該当する要素やオブジェクトを探し出せた。しかし、対話のたびにBIMモデルを調べる仕様だったため、モデル全体の構造をあらかじめ把握しておらず、「BIMモデル内には窓が全部でいくつあるか」「二階の設備を全て確認し、条件に合うものだけまとめて処理」といった複数ステップにまたがる複雑な指示に対応できなかった。
β版では、AIがモデルをどう理解するのか、その根幹を作り直した。地図を持たずに建物の中を歩いているかのようなAIに、明確な「地図」を持たせる。BIMモデル全体の要素をAIが事前に把握しているため、自然言語による問い合わせへの回答精度と速度が大幅に改善した。
タイプ名や位置、フロアを組み合わせた複合条件での検索に加え、「このモデルには何がいくつあるか」といった俯瞰的な問いにも即座に回答する。また、建物の構成要素数や階ごとの配置、部屋や空間情報など、モデル全体の現状をいつでも即座に確認する機能を実装した。
AIに一度指示した操作は、「コマンド」として保存し、次回以降はワンクリックで素早く再実行する機能も備える。さらに、@メンションを利用し、要素やパラメーターを指定する機能も追加し、ユーザーの多様な指示を柔軟に作成できる環境を整えた。
今回のアップデートでポイントとなるのが、大規模タスクの自律的な実行と検証機能だ。「該当する要素を全て検索し、条件を確認して処理する」といった複数ステップにわたるタスクをAIが自ら計画を立て、実行し、結果を検証する。
画面上にはAIの思考プロセスを見える化し、ユーザーがAIの判断根拠をリアルタイムで確認しながら作業を進めることを可能にした。
Arentの社内検証では、Revitで共同編集時に土台となる意匠・構造・設備ごとの「ワークセット」の自動作成と割り当てで、劇的な効果を確認している。Revitでは要素を描いた瞬間に、アクティブなワークセットへ自動的に入るため、意匠の壁を設備のワークセットで描いてしまうようなミスが現場で頻発していた。設計の後工程で起きやすく、干渉チェックやリンクモデルの表示確認の段階で発覚した頃には、間違えた要素を目で探し、手で選び直す手間が掛かっていた。
ワークセットの自動作成では、ユーザーがAIに「意匠・構造・設備のワークセットを作って階ごとに分け、それぞれの要素を割り当てて」と指示するだけで、分野別と階別を掛け合わせた構成でも、既存の要素を含めてAIが一括で正しく仕分け直す。手作業なら数時間を要していた修正作業が、わずか2〜3分で完了する。
また、換気設計の風量や制気口の一括再計算でも、設計排気量を変更する指示を出すだけで、全部屋分の制気口の数や風量、つながるダクトのサイズまで自動で合わせて変更する。AIが変更ややり直しのコストを引き受け、設計者は本来向き合うべき設計検討そのものに時間を割くことができる。
こうした中核機能は、Arentが保有する特許技術(特許第7757475号「BIM検索方法およびBIM装置」)に基づく。BIMシステムに単一の検索窓を設定し、自然言語や画像入力からパーツ属性を抽出して表示する方法や寸法を一括変換する方法を権利範囲とする特許をさらに発展させた形だ。
既存ユーザーは追加費用なしでβ版を利用できるという。今後は実務での検証と改善を重ね、利用者からのフィードバックを開発に生かしていく。
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