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【第3回】日本のBIM先駆者が定義する「BIMはチェンジマネジメントである」BIMで建設業界に革命を!10兆円企業を目指す大和ハウス工業のメソッドに学ぶ(3)(1/4 ページ)

本連載は、2020年度に全物件で“設計BIM化”の大望を抱く大和ハウス工業で、日本のBIM開拓の一翼を担ってきた同社技術本部 建設デジタル推進部 次長・伊藤久晴氏が、BIMを真に有効活用するための道標を示す。第3回は、2013年頃のBIMに対する取り組みを紹介しながら、業務を完全にBIMに移行するためのDigital patchまでの道筋を示す。

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BIMの技術があっても社内展開できなければ意味がない

 前回、「BIMが目指すゴール」について、私の考えを説明した。最終的にはデジタルトランスフォーメーションを目指して建設革命を進めてゆくのだが、このプロセスについては、後述するとして、しばらくは、「Digital patch」、つまり「業務を完全にBIMに移行する」ためには、どのようにすればよいかを説明したい。

 当社は、順風満帆にBIMを進めていると思っておられる方は多いかもしれないが、実は、BIM導入にブレーキがかかっていた時期は長かった。現状を打開すべく、2013年にAutodeskの紹介で、海外のBIMコンサルに当社の状況をアセスメントしていただいた。

 当時の当社の状況を振り返ってみよう。その頃は、設計を中心にRevitの有効性が見えてきたが、なかなか全社的な取り組みには結び付かない時期だった。Revitを使って意匠の実施設計を行うプロジェクト(2011年)をはじめ、意匠・構造・設備の統合モデルを作って干渉チェックをするプロジェクト(2012年)、施工図をBIMで作成するプロジェクト(2014年)にも着手して、技術検証としての意味はあったが、社内展開が進まないため、生産性向上などの効果が見えてこなかった。


2013年頃のBIMの取り組み状況

 その当時でも、Revitは実施設計図や施工図の作成もできるし、統合モデルも作ることができるという技術的な確認は済んでいた。さらに統合モデルを作って、当社として初のコーディネーションミーティングを行い、2次元CADでは分からなかった納まりの不具合も指摘することが可能になったため、新しい技術として関係者には好評だった。

設計者がRevitを使えないとRevit作業が大混乱する

 実施設計のプロジェクトでは、下図のように、階段詳細図や外構詳細図以外の実施設計図をRevitで作成した。テンプレートは、「Revit User Group(RUG)」のモデリングガイドラインをベースにして、オリジナルのものを作った。


実施設計のプロジェクトでRevitを使って作成した実施設計図

 実施設計の作業は、私を含め2人の社員であたったが、設計担当者はRevitを扱ったことがなかった。そのため、設計担当者は、紙に印刷した図面に赤チェックを行い、それを基にモデルと図面を修正した。担当者はRevit上の作業を知らなかったので、2DCADでの設計のように変更を指示してきたが、Revitの作業ではテンプレートを調整したり、ファミリを作り直したりする必要があり、線と文字だけで修正すればよかった2DCADよりも、作業量は相当に増加した。

 その作業をしているとき、東日本大震災が発生し、東京の事務所も大きく揺れ、交通機関がマヒして家に帰れなくなったが、締め切りが近かったので、むしろ徹夜で作業ができると喜んだぐらいだ。

 以上のように、Revitによる作業を外部に委託する場合でも、設計者はRevitで作図できる程度のスキルを持っていなければ、互いに齟齬(そご)が生まれ、不効率化を招いてしまう。


実施設計のプロジェクトで作成したRevitモデルと竣工写真(2011年)

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