建機の遠隔操縦で映像遅延がわずか0.05秒 IIJがi-Con 2.0向けに通信環境を提案:i-Construction 2.0(2/2 ページ)
IIJエンジニアリングとハイテクインター、ジツタ中国は、東京都神田のオフィスから茨城県つくば市に配置した建機を遠隔で操縦する実証実験を行った。これまで課題だった信頼性の高いネットワークの構築や複数カメラ映像の伝送、映像遅延などを衛星通信のStarlink2台と2種類のフレッツ光回線を用いた独自の通信技術で解消した。映像の乱れも抑制する高品質かつ超低遅延の通信環境を提供し、i-Construction 2.0に対応する建機の遠隔施工を後押しする。
映像伝送の遅延は、専用ビデオエンコーダーで0.05秒まで低減
多数のカメラ映像の伝送には、ハイテクインターが開発した「BAERT(バート:Bandwidth Adaptive and Error Resilient video Transmission)」を適用した。BAERTは、どのような映像でも回線の帯域に合わせて最適な符号化(データ圧縮変換)レートを調整し、変動なく超低遅延の映像伝送を実現する「帯域最適化映像伝送」と、回線状態が不安定でも遅延を最小限に抑制する「伝送エラー耐性」の2つの技術を備える。
伝送エラー耐性では、送信データが消失するパケットロスが多発しても、再送信してエラーをリカバリーするため、画像の崩れが起きない。
映像の遅れについて、土木研究所の見解では「300msec(0.3秒)の遅延で施工効率が格段に下がる」としている。映像のズレに関わる重要な機器が、圧縮(エンコード)と解凍(デコード)を行うビデオエンコーダーだ。ハイテクインターが開発した超低遅延ビデオエンコーダー「LVRC-4000」であれば、コーデックの遅延を50msec(0.05秒)にまで低減する。実際にはカメラやモニターの表示処理による遅れも加算され、合計で84〜116msec(0.084〜0.116秒)のラグが生じるが、遠隔施工には影響しない程度に収まる。
実証実験では通信遮断時や復旧時の挙動も検証
3社は先行して2025年6月にも、建設DX実験フィールドから約900キロ離れたハイテクインター北海道開発テストセンター(北海道沼田町)を中継し、10台のハイビジョンカメラ映像と超低遅延エンコーダーを用い、建機2台のリモートコントロールに成功した。多数の高品質なカメラ映像を1台のStarlink Miniを介して伝送し、2台の建機を遠隔で操作したことは、世界的にも先駆的な事例だという。
北海道のテストを踏まえた今回の実証では、通常時のネットワーク特性やBAERTの効果に加え、通信切断時と復旧時の伝送状況を検証した。
テスト環境としては、建機に搭載した4台のハイビジョンカメラ映像をジツタ中国のハイビジョンビデオエンコーダー「LVRC-4000」で圧縮した。現場を俯瞰するためのハイビジョンカメラ1台を含む計5台のカメラ映像を、メッシュWi-Fi、2台のStarlink Mini、2種類のフレッツ光回線(フレッツ・フレッツクロス)を介し、つくばと神田のオフィス間で伝送した。
オフィス側からは、建機操作とカメラコントロール用のデータも送信し、片側の回線が遮断した際の操縦や復旧時の再接続など回線状況を変えて検証し、安定して低遅延で送信できることを確認した。仮に映像が完全に停止した場合は、1〜2秒ほどで建機のエンジンが自動で止まるフェイルセーフ機能も搭載している。
実証の結果、山間部など通信困難な地域でも信頼性の高いネットワークや映像伝送環境を構築し、建機を安定的かつ効率的に遠隔操縦できる実用性を証明した。
米田氏は、建機の遠隔操縦で導入事例の多いローカル5Gとの比較について、「ローカル5Gだと現場でネットワークを構築するのに免許が必要なため、中〜長期で稼働する現場に向いている。メッシュWi-FiとStarlinkの組み合わせは、短期の現場に最適な通信環境を提供する」と説明した。
今後の展望として、2026年度中に今回の機器構成をパッケージ化し、レンタルでの販売を視野に入れる。想定価格は初期費用が60万円〜、月額が18万円〜で、データ変換のコーデック費用が別途必要となる見込み。
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