建機の遠隔操縦、Starlinkで安定制御 国交省の現場検証で確認:i-Construction 2.0
ハイテクインターなど4者は、茨城県つくば市の建設DX実験フィールドで、建機にカメラや映像伝送装置、無線装置を搭載し、遠隔で操縦する実証を行った。
ハイテクインターは2024年12月3日、土木研究所、ジツタ中国、中電工とともに、茨城県つくば市の建設DX実験フィールドで、建設機械の遠隔操縦に関する実証試験を行った。実証では、「Starlink Business(スターリンクビジネス)」、メッシュWi-Fi、超低遅延エンコーダーを使用し、通信障害に伴う建機制御リスクの軽減や、映像遅延による建機の操作ミス抑制が可能なことを確認した。
遅延は300ミリ秒程度、安定した映像伝送を実現
今回の実証は国土交通省の「令和6(2024)年度建設機械施工の自動化・遠隔化技術の現場検証」の一環で、建機の自動化/自律化に向けて策定された「自動施工における安全ルールVer.1.0」の妥当性を検証することを目的に実施。建設DXフィールド内で、土木研究所所有のバックホーにカメラと映像伝送装置、無線装置を搭載し、遠隔からの操縦における安全性を検証した。
実験システムは、低遅延性を確保するための毎秒60フレームのビデオカメラ、ビデオモニターに加え、4K超遅延ビデオエンコーダーLLC-4000をベースに屋外筐体に最大4台のカメラを接続できる4ch超低遅延ビデオエンコーダー「LVRC4000」で構成。バックホーには4つのビデオカメラを設置し、全体の状況を把握するための俯瞰カメラも用意した。ネットワーク構成では、建機に搭載したメッシュWi-FiからStarlinkに接続し、インターネット回線を経由して映像伝送による遠隔制御を行った。
その結果、低遅延エンコーダー搭載の誤り訂正(ARQ)をONにすることで、通信障害よる建機の制御リスクを軽減できることや、ARQをONにした場合でもEnd-Endの遅延は効率的な遠隔制御の目安となる300ミリ秒程度に収まり、安定した映像伝送で誤操作のリスクを抑止できることも確認した。
今後は、山間部など通信手段の確保が困難な地域での土木工事作業の無人化/省人化施工の実現に向け、機能や性能の向上を図っていく。
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