半年で“AIデータセンター”完成 Super XがAI工場のモジュール建築を発表:BAS
シンガポールのSuper X AI Technologyは、データセンター建設が長期化している問題に対し、工場で事前にコンピューティングユニットやエネルギー貯蔵システムなどのひと固まりのユニットを製造し、現場では組み立てるだけで完成するモジュラーAIファクトリーの建築方法を発表した。現状では約18〜24カ月を要していた工期が、約6カ月に短縮するという。
Super X AI Technologyは2025年10月2日、データセンター級のソリューション「Super XモジュラーAIファクトリー」を発表した。従来のAIデータセンター建設で要していた長いリードタイムや高コスト、大規模なエネルギー消費、拡張性の低さといった中心的課題を根本的に解決し、AI時代のコンピューティングリソース導入に革命的なイノベーションを提供する。
モジュール建築の拡張性で「1からNへ」
いまや世界中の企業が大規模言語モデルの導入を競う中、AIインフラに対する需要は指数関数的に増加している。しかし、従来のデータセンター建設は、約18〜24カ月もの期間が掛かっており、AI発展を制約するボトルネックとなっている。
SuperXモジュラーAIファクトリーは、コンピューティング、冷却、電源システムを工場で事前製造から、統合、テストまで完了。現場では組み立てのみで、建物建設の工数が削減し、現場での納品や導入時間は推定6カ月以内に短縮する。施主にとっては、AIコンピューティングが接続すればすぐ使える“プラグアンドプレイ”で始められ、最速でAI市場での機会をつかめる。
事前製造するモジュールの主なものとしては、ソリューションの中核となるコンピューティングユニット「NeuroBlock」、水を使わないドライクーラーまたはチラーによるデュアルソース冷却「CryoPod」、エネルギー貯蔵システム「Energy Vault & Green Energy Storage」、事前製造型HVDC配電システム「Greenport & HyperGrid」、バイオディーゼルで二酸化炭素排出量を削減する「Power Core」。
このうち、NeuroBlockは、最大24台のNVIDIA GB300 NVL72をサポートし、従来ソリューションの7倍相当となる最大3.5MWの電力を供給する。
エネルギー効率は、高圧直流(HVDC)電源技術を全面的に採用し、エンドツーエンドの電力効率を98.5%以上に向上。先進的な液体冷却技術を組み合わせることで、全体のPUE(電力使用効率)を1.15まで低減する。
コンピューティング、冷却、電源を高度に統合し、「複雑なカスタムメイド」を「標準化された製品」に変える。20MWの単一モジュールは、推定わずか6000平方メートルの敷地で設置可能で、AIデータセンターの構成要素を分解して組み合わせで増築する「ビルディングブロック」方式のため、理論上は無限に拡張できる。
Super X AI Technologyはシンガポール拠点で、もともと住宅や商業のインテリアデザイン会社Juneeの社名だったが、2025年6月にAIサーバ企業へと事業転換したことを機に商号変更し、現在はデータセンター向け製品群を提供している(参照:SuperX AI Technologyプレスリリース)。
2025年7月には、年間1万台の高性能AIサーバの供給能力を持つ、日本初の拠点を三重県津市に建設する計画を発表した。高性能AIサーバ、高圧直流(HVDC)装置、高密度液体冷却ソリューションといった独自の主要製品の最終組み立て、システム統合、厳格な品質管理を行う施設となり、2025年下期の稼働開始を予定している。
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