ジョンソンコントロールズCEOに聞く、AIとIoTで進化するスマートビルの近未来:BAS(1/3 ページ)
世界的な脱炭素の潮流を受け、CO2排出量の4割を占めるともいわれる建物にも省エネ化の波が押し寄せている。特にオペレーションカーボンにあたるビルの管理運用で、いかにして今以上にCO2を削減するかが課題となっている。日本で50年以上の実績がある多国籍企業ジョンソンコントロールズは、スマートビルの実現にどう対応していくのか。来日したジョンソンコントロールズの会長兼最高経営責任者(CEO)ジョージ R オリバー氏にインタビューを試みた。
日本のスマートビル市場の現状
今回、来日できたことを大変うれしく思っている。日本市場には以前からビルのスマート化に関する潜在的需要があると認識しており、日本法人では当社の持つ建物の自動制御/中央監視技術などを積極的に展開してユーザーを支援している。
当社の強みは、AIを含むデジタル技術を駆使した高度なビル制御技術にある。この制御技術を活用し、ビルの省エネと快適性の両立を図るとともに、建物の脱炭素とオフィスワーカーの健康促進(Well-Being)を実現してユーザーエクスペリエンスにも貢献。高い専門性と包括的なアプローチにより、グローバル市場においても持続可能なビル管理ソリューションの分野でリーダーシップを発揮している。
日本市場では、これまでビルの自動制御や中央監視に関する技術の導入が順調に進んできたが、最近は技術革新においてやや停滞が見られる。しかし、当社が日本市場で実施した調査によると、建物に関して「改善の余地が残っている」との声も多く、いわゆる「スマートビル」への移行ニーズが依然として高いことが分かった。
また、グローバルの顧客を対象とした調査では、ここ数年で既存のビルの自動化システムを刷新したい要望が増えていることも判明している。これは気候変動対策の観点でも非常に重要な取り組みで、世界のCO2排出量のうち、約40%が建物に由来するといわれているからだ。
ビルシステムのリニューアルによって省エネが進めば、ビル全体の消費エネルギーを30〜50%削減できる可能性がある。企業にとって長期的なコスト削減とともに、CO2排出量ゼロを実現する第一歩にもなる。
――生成AIやクラウドで需要が増す、データセンター事業の展望
ジョンソンコントロールズの注力分野の1つがデータセンター向けのソリューションだ。データセンター事業では、チラーなどの冷却設備から運用管理まで、データセンターのライフサイクル全体をカバーするトータルソリューションを提供できる。データセンター内の機器の状態を監視するソリューションや運用に関するノウハウ、防火やセキュリティ対策を含むあらゆる技術を活用し、幅広い顧客ニーズに対応する。
さらに、当社独自のデジタルソリューション シリーズ「OpenBlue(オープンブルー)」を核にした先端技術を導入し、設備機器の運転効率と安定性を最適化している。
データセンターで不可欠な過熱を防ぐ空調に関しては、ジョンソンコントロールズは高度な冷却技術を有している。風冷や水冷、パッケージ製品の提供を通じて世界をリードする立場にある。冷却技術においては地球温暖化係数(GWP)が最も低くなるような冷媒を使用することで、データセンターのCO2排出量削減にも貢献している。
サイバーセキュリティ面では「ゼロトラスト」の概念に基づいたIoTのテクノロジーを提供し、高いセキュリティレベルを維持している。大規模なデータセンター運営企業、クラウドサービスを提供するハイパースケーラー、複数の顧客にサーバスペースを提供するコロケーションプロバイダーといったさまざまな企業とパートナーシップを結び、セキュリティの脅威に対して対応する。
これに加え、高度なスキルを持った人材をデータセンターの保守/保全に配置。制御技術や環境配慮技術、セキュリティなど、データセンター全般にわたるさまざまな技術をパッケージにしたトータルソリューションを提供し、ユーザーニーズに対応している。
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