特集
電力会社の知見でインフラ延命 管内測定ロボなどTDSが示す維持管理の解決策:メンテナンス・レジリエンスTOKYO2025(3/3 ページ)
社会インフラの老朽化や人材不足が深刻化するなか、インフラ維持管理を支える技術には実用性と持続可能性が求められている。東京電力パワーグリッド100%子会社の東京電設サービスは、電力インフラの現場で培った技術力を生かし、測定ロボットや錆落とし用電動工具、塗料洗浄液、防錆力再生技術といった独自技術で社会インフラ全般の長寿命化に挑んでいる。
鋼材の取替工事を回避し、防錆力を再生する「Arts工法」
防錆力再生技術の「Arts工法」は鋼構造物のメンテナンス方法の一種で、溶かした金属を吹き付ける防錆溶射の工法。ArtsはAntirust thermal sprayの略で、東京電設サービスが登録商標を保有している。
経年劣化で減耗した亜鉛めっき鋼材は、一般的に延命化対策として防錆塗装を施す。しかし、著しく劣化が進行し、亜鉛めっきが消失した場合は鋼材そのものの取替が必要となる。
Arts工法は、施工に時間とコストを要する鋼材取替を回避するだけでなく、溶融亜鉛めっきと同等以上の防錆力を持つ亜鉛/アルミ擬合金溶射皮膜を形成する。新設同等以上の防錆力を再生させる。改修周期を30年ほど延命し、ライフサイクルコストの低減に寄与する。 ブース担当者は「部材の取替工事では、時間やコストだけでなく、作業員の安全確保も重要だ。溶かした金属を吹き付けるだけなので、作業員の安全性も高まる」と説明した。
東京電設サービスの4つのソリューションは、いずれも現場の課題解決に直結する実用的な技術だ。今回の展示は、電力インフラで培った技術力を、社会インフラの持続可能性に還元する維持管理の新たな可能性を示すものとなった。
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