東南アジアの昇降機保守に報告書作成の手間を半減する「KEGMIL」導入、三菱電機ビルソリューションズ:スマートビル
三菱電機ビルソリューションズは、FTV LABSが提供する建設や製造向けのフィールドサービス支援アプリ「KEGMIL」を海外での昇降機の保守業務に導入する。紙や複数のソフトウェアに分散していた業務記録や作業報告、スケジュール管理をアプリで一元化し、事前の導入検証では作業員の割当計画作成で約90%の削減、報告書作成作で約50%削減の成果が現れたという。
三菱電機ビルソリューションズは2025年9月25日、フィールドサービス支援アプリ「KEGMIL(ケグミル)」を海外の昇降機保守業務に導入すると発表した。2025年10月にシンガポールで運用を開始し、以後は東南アジア各国やその他地域への横展開も図る。
作業員の割当計画作成で9割削減、報告書の作成で約半減の業務効率化
KEGMILは、三菱電機が2022年9月に出資を決めたシンガポールのスタートアップ企業のFTV LABSが開発した現場で働くノンデスクワーカーを対象としたアプリ。作業指示から、保守員の派遣、進捗把握、報告書作成までがモバイル端末上で完結する。三菱電機ビルソリューションズによると、事前検証で保守作業員の割当計画作成を約90%、作業報告の作成を約50%をそれぞれ削減したという。
アプリでは、製品ごとの作業手順をワークフローやチェックリストの作成機能で標準化もできる。仕様が異なる現場や号機ごとにきめ細かい作業設定が可能で、従来の分散管理から脱却した効率的な保守体制の構築に寄与する。
保守作業員の作業進捗は、定期的な情報取得で把握し、GPSによる所在地データを掛け合わせると、故障など緊急対応時の迅速な保守作業員派遣が可能になる。現場ではチェックリストの活用で、昇降機の状況に応じた的確な作業指示が出せ、早期に復旧できる。作業完了後は、所定の書式でデジタルサインを含めた電子報告書が自動作成され、引継ぎに役立つ現場写真や動画の添付にも対応する。作業指示〜作業チェックリスト〜作業報告が現場に居ながら完結するので、オフィスに戻る必要がなくなる。
三菱電機ビルソリューションズは導入背景について、昇降機のフィールドサービス分野は、依然として紙や手作業による記録/管理が多く、現場で取得したデータの大半はオフィスで改めて複数のシステムに手入力するなど、非効率な業務プロセスが多々存在していることを挙げる。その点、KEGMILはチェックリストや写真などを用いた明確な作業指示、各種作業のリアルタイム進捗確認、GPSによる所在地データを活用した保守作業員の緊急派遣(ディスパッチ)、デジタル署名がアプリケーション上で一元的に完結する。
今後は、昇降機の常時監視や点検を可能にするグローバル遠隔保守サービス「M's BRIDGE」との連携を図り、総合的な保守サービスの効率性を高めるとともに均一で高品質なフィールドサービスの実現を目指す。さらに蓄積したフィールドデータをAIや機械学習、IoT、IoE(Internet of Everything)で利活用し、各地域独自で対応している保守作業員の要員割り当ての最適化、復旧作業オペレーションのグローバル標準化も進める。
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