建物の仕様が確定していない計画初期段階からホールライフカーボンの即時予測が可能に 大林組:カーボンニュートラル
大林組は、建物のCO2排出量予測システムの機能を拡充した。建物の仕様が確定していない計画初期段階からホールライフカーボンの算出と削減の取り組み効果の予測が可能となる。
大林組は2025年9月24日、建物のCO2排出量予測システム「カーボンデザイナー」の機能を拡張したと発表した。建物の仕様が確定していない計画初期段階からホールライフカーボンの算出と削減取り組み効果のシミュレーションが行え、より迅速な削減の方針策定が可能になる。
近年、建物のホールライフカーボン(建物の資材製造から解体/廃棄に至るまでのライフサイクル全体で排出されるCO2)の削減に対する関心が高まっている。削減のためには計画初期段階でのホールライフカーボンの把握が重要となるが、既存の算定ツールは資材の数量情報入力が必要で、建物の仕様が未確定な計画初期段階では活用が困難という課題があった。
今回の機能拡張により、同システムでは、「建物用途」「延床面積」「工事請負金額」「工期」の4項目の情報をもとに、大林組の施工実績や算定ノウハウ、公的データにより、ホールライフカーボンが即座予測が可能。着工から解体までの時系列による排出予測や必須4項目以外の詳細情報の追加入力にも対応、検討の進捗に応じて予測精度を高められる。
また、環境配慮型コンクリート「クリーンクリート」など低炭素型資材の採用や軽油代替燃料の使用といった削減メニューと、割合/数量などの数値を設定すると、ホールライフカーボン削減効果を同時に自動計算し、グラフ化する。アップフロントカーボン、オペレーショナルカーボン、エンボディドカーボンといった各カテゴリーの削減効果も算出できる。
この他、資材製造から施工段階のCO2排出量予測方法を見直し、項目も拡充することで精度向上を図った。予測範囲を解体段階まで拡大させ、ホールライフカーボン全体を網羅した。さらに、シミュレーション可能な軽油代替燃料の追加、BEI目標値の入力対応、基準建物との比較を自動で計算する機能などが新たに搭載された。これにより、削減効果の即時予測とともに、削減量が直感的に把握できるようになる。
大林組は今後、拡張したシステムを積極的に活用し、建物の計画初期段階からホールライフカーボン削減に取り組みやすい環境を提供していく。
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