築20年のマンションでZEH改修が快適性や健康に与える影響を科学的に検証、東京建物など:ZEH
東京建物、YKK AP、慶應義塾大学は、都内にある築20年の大型賃貸マンションで、ZEH基準への改修が住む人の快適性に与える影響を検証する実証実験を開始した。ZEHが快適性や健康に与える影響の可視化を目指す。
東京建物は2025年9月17日、YKK AP、慶應義塾大学と共同で、ZEH基準への改修が住む人の快適性に与える影響を検証する実証実験を開始したと発表した。東京建物が開発した東京都江東区にある築20年の大型賃貸マンション「Brillia ist東雲キャナルコート」内の住戸に被験者が宿泊し、温湿度などの室内環境計測や血圧や脈拍などのバイタルデータを比べることで、ZEHが快適性や健康に与える影響を可視化する。
実証にはマンション内の2住戸を使用。高断熱窓や断熱材を使用して環境性能をZEH基準にまで向上させた住戸と、高断熱窓や断熱材変更を伴わない通常の改修を行った住戸を用意し、被験者グループにそれぞれの住戸で一定期間生活してもらう。
ZEH化が住む人の快適性や健康性に与える影響を科学的に検証し、入居者アンケートのような主観的データだけでは示せなかった身体への効果を裏付ける。これにより、電気代削減といった経済的メリットだけでなく、ZEH住宅のウェルビーイング向上効果を発信することを目指す。
実証では、室内環境計測と被験者入居計測を行い各種データを取得した。
室内環境計測では、各対象住戸のリビングダイニングや居室、バルコニーなど7カ所で温湿度を測定。サーモカメラで熱画像を撮影し、窓や躯体の表面温度から立体的な温度分布を予測した。また今後、エアコンの稼働記録をもとに消費電力の算出と分析を行う。
被験者入居計測では、ウェアラブル端末などを使用して体温/体組成/歩数/睡眠時の活動量といったバイタルデータを取得。作業効率の測定として、テキストタイピングや算術課題などの模擬作業も実施した。
夏季と冬季の2回実施
実証は、断熱性能の違いが出やすい夏季と冬季の2回行う。夏季実証の期間は、室内環境計測が2025年8月18日〜23日、被験者入居計測が2025年8月25〜9月6日。冬季は夏季同様の各種計測に加え、窓の結露状況や血圧の変化なども測定する予定。東京建物は、両季の結果を合わせて分析し、ZEH改修住戸の効果を検証する。
「Brillia ist東雲キャナルコート」は2005年3月竣工。14階建て高層棟と4階建て低層棟の2棟構成で、総戸数は423戸(高層棟380戸、低層棟43戸)。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
スマートホーム:住宅メーカー向けIoT機器管理サービスを提供、三菱電機
三菱電機は住宅メーカーやデベロッパー向けIoT機器管理サービス「AMANOHARA」の提供を開始した。住戸の遠隔機器管理に加え、施工業者による入居前の接続/設定に対応し、スマートホームやZEHの普及を後押しする。リノベ:リノベ事業で省エネ性能証明の取得率30%目指す、コスモスイニシア
コスモスイニシアは2025年度に着工する既存マンションのリノベーションにおいて、「住宅省エネルギー性能証明書」取得率30%達成を目指す。「省エネ計算の専門家」が解説する建築物省エネ動向(5):補助制度が使える今のうちに! 建築物の省エネ認証の計画的な取得を
本連載では、環境・省エネルギー計算センター 代表取締役の尾熨斗啓介氏が、省エネ基準適合義務化による影響と対応策、建築物の環境認証などをテーマに執筆。第5回は、環境性能認証取得に役立つ補助制度と、利用時の注意点を解説します。ZEH:アエラホームのZEH住宅、2024年度実績は目標を9%上回る
注文住宅などを手掛けるアエラホームは、自社で新築するZEH(ネットゼロエネルギーハウス)住宅の普及率について、2024年度の実績と2025年度の目標を公表した。木造/木質化:住友林業、木造混構造6階建て社宅が完成 中大規模集合住宅のモデルケースに
住友林業が設計・施工した平面混構造の6階建て新社宅が、茨城県つくば市に完成した。木造混構造中大規模集合住宅のモデルケースとして位置付け、普及拡大を目指す。産業動向:建築基準法の改正に伴い、パナソニックが構造計算と省エネ計算のワンストップサービス開始
パナソニックは、建築基準法の改正に伴い、木造軸組工法向けの邸別構造計算と省エネ計算の代行サービスを開始する。地域の住宅会社を対象に、手間のかかる許容応力度計算による構造計算と省エネ計算サービスをまとめて請け負うことで、設計の負担を減らし、高性能住宅の提案が可能になる。