7年ぶりに進化した新世代ショベルと無人化施工で、コマツが未来の建設現場を発信:第7回 国際 建設・測量展(2/2 ページ)
コマツとその子会社EARTHBRAINはCSPI-EXPO2025で、「未来の建設現場」をテーマに最新技術を披露した。7年ぶりにフルモデルチェンジした新世代ショベル「PC200i-12」の国内初公開に加え、無人化施工をデモンストレーション。省人化と安全性向上を両立するビジョンを示し、業界の社会課題解決に向けた強いメッセージを発信した。
国交省のi-Construction 2.0と連動、3DMC選択制で広がる施工の選択肢
PC200i-12は、業界初となる「3Dマシンコントロール(3DMC)」の選択制を導入した。本体価格に3DMC利用料を組み込み、利用日数と時間が無制限の「プランA」、利用日数に応じて後払いする「プランB」、そして3DMGのみの利用に限定した「プランC」の3種類を用意。ブース担当者は「ユーザーのICT施工への対応度合いはさまざま。複数のプランをそろえることで、現場に即した生産性向上に貢献できる」と語る。
こうした仕様の背景には、国土交通省が2024年4月に打ち出した「i-Construction 2.0」がある。「施工のオートメーション化」「データ連携のオートメーション化」「施工管理のオートメーション化」を3本柱に掲げ、生産年齢人口が約2割減少すると予測される2040年度までに、省人化を少なくとも3割、さらに生産性を1.5倍に引き上げることを目指している。公共工事では、ICT土工やICT浚渫(しゅんせつ)工(河川)が2025年度から原則ICT施工となり、対象工種も順次拡大される見通しだ。
遠隔と自動で省人化、無人化施工デモが示した現実解
ブース内のメインステージで披露された「無人化施工デモンストレーション2025」も、建設現場の未来像を鮮明に示すものだった。
デモ前半では、遠隔施工/無人化施工の導入でオペレーターのライフスタイルがどのように変わるのかを、ドラマ仕立てで再現した。
後半は河川築堤工事を想定した実演。現場を3次元に可視化して施工管理に必要な土量、面積、距離などの情報を取得する「Smart Construction Dashboard」、仮設設計検討用の簡易CAD「Smart Construction Design3D」、開発中の「Smart Construction Craft」などを使用した。いずれもEARTHBRAINのIoTやAIなどを駆使し、建設現場の安全性や効率性を飛躍的に高めるコマツ独自の概念「スマートコンストラクション」のソリューション群だ。
開発担当者は、無人化施工の要件として3つのポイントを挙げた。工事計画の作成や修正をデジタルで簡単に行えること。遠隔と自動の施工を柔軟に切り替えて運用できること。そして、最小限の人員でオペレーションを可能にすることだ。
デモでは、ドローンで取得した点群データから施工量を算出し、設計データを建機に転送してICT施工を開始するまで、3つのポイントを押さえた一連の流れを映像で紹介。続いて、建機遠隔操作システム「Smart Construction Teleoperation」による段切り/盛り土の作業が、千葉県の試験場からリアルタイム中継し、遠隔施工と無人施工が、現場でどのように行われるのかを具体的に示した。
今回は、オペレーターが遠隔ショベル、遠隔ブルドーザー、自動ダンプを遠隔操作と自動運転を組み合わせながら1人で操縦。省人化と効率化が両立できることを実証した。
人とロボットが協働する建設現場へ
デモの最後には、ヒューマノイドロボットも登場。オペレーターの動きを模倣して動く姿は、人手不足解消に貢献する可能性を示唆するものだった。開発担当者は「建設現場で人とロボットが共に働く未来は必ず訪れる。ロボット活用も含め、無人化施工ソリューションを進化させていく」との展望を語った。
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