1点センサーで地震後の建物の構造健全性を簡易判定、大成建設が「測震ナビ」拡充:BCP
大成建設は構造健全性モニタリングシステム「測震ナビ」のラインアップを拡充し、建物上層部に設置した1点の加速度センサーのデータを基に、地震発生後の建物の構造健全性を簡易に判定できるシステムを開発した。
大成建設は2025年9月2日、建物上層部に設置した1点の加速度センサーから地震発生後の建物の構造健全性を簡易判定できる新システムを開発したと発表した。2019年に開発した構造健全性モニタリングシステム「測震ナビ」のラインアップを拡充し、建物規模や用途に応じた選択を可能にした。
測震ナビは複数の超小型センサーを使用して地震発生時の建物の揺れを高精度に計測/分析し、構造健全性を「安全/要点検/危険」に分類して迅速に判定できるモニタリングシステム。2025年8月時点で約225棟への導入実績がある。今回、より簡易に導入できる新システムを開発した。
新システムは建物上層部の1点センサーで地震時に観測された加速度の記録をベースに、振動モデルを用いて1階床の揺れを推定し、建物の傾き具合(層間変形角)を算定。この値と判定閾値を比較して構造健全性を判定する。記録は無線通信でクラウドに送信するため配線工事が不要で、設置作業は数時間で完了。テナントビルでも占有部分だけで運用可能だ。
また、新システムは従来の測震ナビと同じプラットフォームで運用可能。複数の建物を所有するユーザーは、高層ビルには高精度な判定を行う従来システムを、比較的整形な形状の中低層建物には簡易判定を行える新システムを導入するなど使い分けが可能になる。地震発生後に複数建物の構造健全性を迅速に判定することで事業継続計画(BCP)の早期立案が可能となる。
新システムは、15層までの中低層建物を対象に、日本建築防災協会の「応急危険度判定基準に基づく構造モニタリングシステム技術評価」を取得済み。大成建設によれば、1点センサー構成のモニタリングシステムでは初の事例となる。
今後も建物規模や用途、設置条件、多数の建物に短期間で導入したい場合など、ユーザーの多様なニーズに合わせたラインアップを拡充していく。
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