アクティオが「建機遠隔化」をレンタル開始する狙い 鹿児島〜東京間をStarlinkで操縦成功:i-Construction 2.0(1/2 ページ)
アクティオは、小型建機を遠隔操作する独自システムを開発した。実証実験では、衛星通信のStarlinkと各種カメラも含むジザイエの映像伝送技術で、鹿児島姶良工場と東京本社の約956キロをつないだ。能登半島地震などの突発的な復旧工事で短期レンタルの需要増に伴い、既に能登や福島で問い合わせがあり、狭小空間の工事向けにも建機遠隔化システム一式のレンタルや特注対応で提案する。
アクティオは、小型サイズの建機を対象にした遠隔操作システムを開発した。機体にICT化のカスタマイズを施し、衛星通信「Starlink Business(スターリンク ビジネス)」で遠方の操縦席からオペレーターが複数のモニター越しにコントロールする仕組み。
2025年5月29日には、東京都中央区日本橋のアクティオ本社1階「AKTIO Rensulting Studio」で発表会を開催し、千葉県市原市のアクティオ プラント営業課と中継を結び、現地のバックホー(パワーショベル)を日本橋のコックピットから操縦するデモを披露した。
八潮の陥没事故でも要望が、突発的な災害対応で活躍するレンタル遠隔建機
発表会で代表取締役社長 小沼直人氏は「建機の遠隔操作は5Gなどで数年前から進んでいる。能登半島地震の復旧工事でも、崩落の危険がある橋で建機を遠隔で無人走行させた。災害時には発電機のニーズが高いが、スマートフォンなどでの情報収集のために通信網も欠かせない。地上の通信インフラが損壊しても、場所にとらわれずインターネットにつながる衛星通信を災害時に発電機と一体でレンタルする発想から、建機の遠隔操作にもStarlinkを活用することとした」と説明した。
また、2025年5月27日に東京都江戸川区東葛西の工事現場で発生したボンベ爆発事故にも触れ、「自然災害だけでなく、今後は人が近寄れない場所の作業にも導入してもらいたい」と期待を語った。
サービスの概要は、アクティオ 技術部 部長 北原貴明氏と課長 春原和宏氏がプレゼンした。
現在の建設業界では人材不足や従業者の高齢化が深刻化している。働き方改革に伴う「建設業の2025年問題」への対応も求められており、生産性の向上と労働環境の改善は喫緊の課題となっている。
こうした状況にあって、アクティオは建設現場の働き方を変革すべく、デジタル技術を活用した建機の遠隔化/自動化の開発を進めてきた。
これまでに大成建設や極東建設と共同で、水深50メートルまで高精度に施工する水中作業機を開発した。アクティオは、機械製作や作業システム(マシンガイダンス)の構築を特注で担った。北原氏は「遠隔化した建機はゼネコンが開発した例もあるが、水中は当社だけ。八潮の道路陥没事故でも、水中の工事を小型建機の遠隔操作でできないかとの問い合わせもあったが、納期の関係で断念せざるを得なかった」と話す。
他にも鉄建建設とは2024年に、千葉県成田市の建設技術総合センターにある10.2(幅)×7.2(高さ)×21(奥行き)メートルの模擬トンネルで、バックホーの遠隔操作をテストした。実機のキャビンと同じレバーやペダルを備える操作席にオペレーターが座り、ローカルエリアネットワーク(LAN)で無人のレンタル建機「ラジコンBH」を正確に動かした。
今回発表したシステムは、レンタルで需要の高い小型建機を対象とし、1つの操作席で0.14立方メートルのバックホーと2.5トンキャリアダンプの2台を操縦できる。ユーザーから「人の手で動かせるようにもしたい」との要望にも応じ、人が乗り込んでの直接操作にも対応している。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.