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「紙の台帳にサヨナラ」スマホで街灯を予防保全、パナソニック EW社の現場点検DXが愛媛全域で展開へスマートメンテナンス(3/3 ページ)

老朽化が進むインフラ設備を誰でも、どこでも、すぐに点検できる未来へ――。パナソニック エレクトリックワークス社とアルビトの共創で誕生したスマホアプリ「LD-Map」が、愛媛県新居浜市でインフラ点検のデジタルツールとして採用された。これまで人員不足や有効な点検管理ツールがなく実現できていなかった「予防保全」が現場完結型の点検DXで実現する。

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現場完結型の点検プロセスが可能になるLD-Map

 LD-Mapは、従来の紙台帳や事後対応型の管理体制から脱却し、現場主導での効率的な点検、記録、分析のプロセスを一気通貫で網羅するプラットフォームを目指した。開発に当たっては、自治体の声を取り入れて機能改善を繰り返すプロトタイピングで、道路附属物の維持管理という特有の業務に最適化した。特徴は「現場完結型の点検プロセス」「クラウドベースのデータ蓄積と活用」「誰でも使えるユーザーインタフェース」の3つ。

LD-Mapで実現する予防保全型インフラ維持管理のオペレーション
LD-Mapで実現する予防保全型インフラ維持管理のオペレーション 提供:パナソニック エレクトリックワークス社

 現場完結型の点検プロセスでは、デモで証明した通り、現地に居ながらスマホやタブレットだけで、識別番号の読み取りから写真撮影、状態確認、記録登録まで一連の作業が完結する。事務所に戻って台帳を更新するといった煩雑な手間がなくなり、点検から報告までのリードタイムが大幅に短縮する。

 クラウドの利点は、現場で取得した情報が即座にデータベースへ反映される点にある。写真付きで履歴管理が可能になり、経年劣化の傾向分析や修繕計画への反映、担当者間の情報共有も容易になる。災害発生時には、被害状況を迅速に可視化するツールとしても活用が期待される。

 操作画面はシンプル設計で、技術職でなくともICTに不慣れな職員でも感覚的に扱えるインタフェースとなっている。点検対象を構成する部位(灯部、支柱、基部、開口部、周囲の植栽)に応じてガイドが表示されるので、作業者はその流れに沿って写真を撮影すればよい。

フィードバックからのアップデート内容
フィードバックからのアップデート内容 提供:パナソニック エレクトリックワークス社
実装活動に参加した市担当者の意見
実装活動に参加した市担当者の意見 提供:パナソニック エレクトリックワークス社

 2025年度以降は、愛媛県全域への展開を見据えており、他府県からの導入希望も既に寄せられているという。正式リリースは2026年度で、将来はガードレールや標識など点検対象の拡張とともに、センサーデータの取り込みによる劣化の予兆検知なども視野に入れている。また、国のインフラ長寿命化計画や自治体のスマートシティー戦略との連携も想定し、LD-Mapは地域のインフラ管理の標準ツールとして定着する可能性を秘めている。

デジタル実装加速化プロジェクト「トライアングルエヒメ」とは

 LD-Mapの実証は、愛媛県のトライアングルエヒメの一事業として、2024年10月から検証を進めている。トライアングルエヒメは2022年度にスタートし、愛媛県を「日本一のデジタル実証フィールド」と位置付け、県内外の企業が有する最新技術を県内の自治体や地域事業者とマッチングさせ、現場での検証を重ねながら導入を進めていく仕組みだ。

「トライアングルエヒメ」について説明した愛媛県 企画振興部 デジタル戦略局 デジタルシフト推進課 山本大輔氏
「トライアングルエヒメ」について説明した愛媛県 企画振興部 デジタル戦略局 デジタルシフト推進課 山本大輔氏 筆者撮影

 実証に当たっては、県が伴走型で支援し、事業者との課題設定やフィールド調整、勉強会の開催などで現場起点での改善と地域連携を図り、現在までに農業や観光、製造業、インフラ管理など幅広い分野でのプロジェクトを進めている。

「トライアングルエヒメ」の概要
「トライアングルエヒメ」の概要 提供:愛媛県 企画振興部 デジタル戦略局 デジタルシフト推進課
「トライアングルエヒメ」の共創への取り組み
「トライアングルエヒメ」の共創への取り組み 提供:愛媛県 企画振興部 デジタル戦略局 デジタルシフト推進課

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