AIエージェントが進化した「MCP」 自然言語の対話で写真から3Dモデル作成【土木×AI第35回】:“土木×AI”で起きる建設現場のパラダイムシフト(35)(1/2 ページ)
人間の代わりにいろいろな作業を行う「AIエージェント(AI Agents)」、より自律的で自ら意思を決定する「エージェント型AI(Agentic AI)」が建設業の日常業務でも使われ始めています。議事録作成や文書作成だけでなく、外部のシステムやデータソースと接続する「MCP」を活用すれば、自然言語の対話で3Dモデリングなど、より多様な問題解決が可能になります。
大規模言語モデル(LLM)を実業務などで活用する際は、LLM自体の能力だけでなく、外部のデータソースやツールと連携させて情報やサービスを呼び出して「AIエージェント(AI Agents)」や「エージェント型AI(Agentic AI)」として使うのが便利です。
橋梁設計基準
橋梁(きょうりょう)に関する設計基準などの専門図書を用い、専門的な質問に対する回答を生成するAIエージェントを構築した例が文献1です※1。ここで提案されているAIエージェントは、下図のように(i)グラフ構築と(ii)回答生成の2段階で構成されています。
まず(i)で、LLMによって専門図書の記載を関連性を考慮したツリー状のグラフで表します。そして、(ii)の質疑応答では、1.問いかけ(クエリ)、2.推論方針、3.探索、4.回答推論の4段階のプロセスで、(i)で作成したグラフ上のデータから回答を生成しています。網羅的に専門知識を探索して、文書中の適切な箇所を参照するなどの活用が期待されます。
★連載バックナンバー:
本連載では、土木学会 構造工学でのAI活用に関する研究小委員会で副委員長を務める阿部雅人氏が、AIと土木の最新研究をもとに、今後の課題や将来像について考えていきます。
エージェントという言葉は代理人という意味などいろいろな使われ方をしていますが、計算機科学では自ら環境を観測し、目標に基づいて行動を選択するシステムを指すことが多いです。
その原点の1つは、1950年にアラン・チューリング(Alan Turing)によって提案された「チューリングテスト(Turing test)」にあると思われます※2。人間と区別がつかないほど、コンピュータが自然に会話できた場合にコンピュータが知性を持っていると評価するテストで、人間のように振る舞うエージェント的な概念が示されています。
※2 “Computing Machinery and Intelligence"49:433-460 A. M. Turing in Mind 1950
1980年代には、複数のAIが協調や競争しながら問題解決を目指す「マルチエージェントシステム(Multi-Agent System:MAS)」が登場します。現在は、エージェントの行動評価を反映した強化学習も取り入れながら、最適化※3,4や避難のシミュレーション※5,6などに使われています。
古くはジョン・フォン・ノイマン(John von Neumann)らによって、1940〜1950年代に定式化された離散的な単位「セル」が一定のルールで状態を更新していくことで、複雑な現象をモデル化する「セル・オートマトン(Cellular Automaton:CA)」にも似た考え方がみられます※7。
※7 “Theory of Self-Reproducing Automata, University of Illinois Press"J.Von Neumann, A.W.Burks 1966
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