トンネル工事で無線電子雷管を使った機械装填発破に成功、大成建設:山岳トンネル工事
大成建設は、国土交通省東北地方整備局が発注した道路トンネル工事で、自社開発の爆薬装填装置「T-クイックショット」を使用し、無線電子雷管を含む爆薬を全て機械装填する試験発破を実施した。
大成建設は2025年8月18日、国土交通省東北地方整備局発注の「国道13号新及位(しんのぞき)トンネル」工事で、無線電子雷管を用いた機械装填(そうてん)方式による発破作業に成功したと発表した。
トンネル下部断面(約60立方メートル)の岩盤を対象に、2025年8月4日に試験発破を実施した。自社開発の機械式爆薬装填(そうてん)装置「T-クイックショット」を使用し、切羽から1.5メートル離れた場所から、無線電子雷管(ウインデットIIシステム)を含む爆薬を完全に機械装填した。従来は人力で行っていた切羽近傍での雷管結線などの作業が不要となり、作業員の安全性と生産性の向上につながったという。
社会実装に向けマニュアルや関連基準類を整備へ
今回の取り組みは、内閣府・戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)第3期課題「スマートインフラマネジメントシステムの構築」の、サブ課題A「革新的な建設生産プロセスの構築」における新たな成果に位置付けられる。
プログラムではこれまで、山岳トンネル建設現場で無線電子雷管を活用した発破作業の効率化を推進してきた。2025年5月には人力での爆薬装填作業で無線雷管を使用した試験発破を実施。トンネル側壁部の岩盤(約10立方メートル)に対して安全かつ効率的な発破に成功した。今回の取り組みでは、機械装填へと作業レベルを発展させた。
大成建設は今後もSIP事業を通じて関係各署と連携し、無線電子雷管を用いた試験発破を継続するとともに、社会実装に向けたマニュアルや関連基準類の整備に取り組む。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
現場管理:DX対応型、多機能保護具「スーパーSCヘルメット」を開発 大成建設
大成建設は、トンネル坑内作業向けのDX対応型次世代多機能保護具「スーパーSCヘルメット」を開発した。個別空調や後方視認、双方向通信などの複数機能を集約し、トンネル坑内作業の安全性や快適性、作業性を向上させる。現場管理:トンネル掘削の進捗に応じて工事設備を自動制御、電力消費量を48%削減 大成建設
大成建設は、建設現場の施工管理を支援する統合プラットフォーム「T-iDigital Field」に山岳トンネル掘削作業の進捗状況に応じて複数の工事設備を自動制御する機能を追加した。施工中の現場に導入し、電力消費量を約48%、CO2排出量換算で月間約17トン相当削減できることを確認した。山岳トンネル工事:トンネル工事向けVR切羽観察システムに新機能、不安定岩塊の位置と規模を予測 大成建設
大成建設は山岳トンネル工事向けのVR切羽観察システム「T-KIRIHA VR」を機能拡張し、岩盤亀裂面の走向傾斜を詳細に計測できる機能を追加した。切羽前方の不安定岩塊を的確に予測することで、施工現場の安全性向上を図る。山岳トンネル工事:爆薬供給から装薬孔装填まで完全機械化、大成建設が「T-クイックショット」を機能拡張
大成建設は、発破掘削の装薬作業を高速化する爆薬装填装置「T-クイックショット」を改良し、無線電子雷管対応型に機能拡張した。これまで切羽近傍で人力で行っていた爆薬の結線などの近接作業が不要になる。山岳トンネル工事:トンネル切羽アーチ面のコンクリート吹付け厚計測システムを開発、大成建設
大成建設は、山岳トンネル工事における切羽アーチ面へのコンクリート吹付け厚計測システム「T-ショットマーカーアーチ」を開発した。切羽前面の鏡面を対象とした「T-ショットマーカーフェイス」と併用することで、切羽全体の吹付け厚を総合的に計測し、管理できるようになった。スマートコンストラクション:トンネル坑内の掘削出来形3D計測システムを大成建設が開発、計測作業2分で完了
大成建設は、山岳トンネル工事で、トンネル坑内の掘削出来形を迅速に把握できる3次元計測システム「T-ファストスキャン」を開発した。計測器設定、3次元計測、機械点測量、撤収といった一連の計測作業が計2分で完了する。