ラインスキャナーとAIロボットアーム活用、爆薬装填ホース自動挿入装置を開発:山岳トンネル工事
戸田建設は、山岳トンネル発破作業の安全性や生産性向上を目的に、AIロボットアームとラインスキャナーを活用した爆薬装填ホース自動挿入装置を開発した。
戸田建設は2025年7月24日、UP設計コンサルタント、HCI、虎乃門建設機械の協力のもと、トンネル切羽での爆薬装填(てん)作業を無人化する「爆薬装填ホース自動挿入装置」を開発したと発表した。
従来の爆薬装填作業は、作業員が崩落リスクの高い切羽に立ち入り、手作業で装薬孔へ挿入していた。新装置は、ラインスキャナーとAI画像処理技術で装薬孔の位置を正確に検出し、AIロボットアームによるホース挿入、送り装置による押し込みまでを遠隔/自動で行える。
装置は、ラインスキャナー、AIロボットアーム、送り装置の3つの機構から成る。ラインスキャナーは線状に対象物をスキャンして距離情報を取得する。スキャナーをAIロボットアームで横方向に移動させながら縦方向に連続スキャンすることで、平面的に距離情報を取得。データから遠方を暗く表示し、孔内部を強調することで、照度や色調など環境条件の影響を受けずに装薬孔を可視化できる。
ロボットアームには、AI画像処理機能や力覚センサーと連携可能なコントローラーを搭載。装薬孔の中心位置を検出し、ホース先端を正確に導く。挿入時は、アーム先端の力覚センサーがホースと孔壁との接触を検知して自動で微調整を行う。送り装置は、上下2組のローラーでホースを挟み、回転動作によって孔の奥まで押し込む仕組みだ。
装置の検証実験は、HCIの板原第2工場で模擬岩盤を用いて行った。装薬孔の検出からホースの挿入、押し込みまでの一連の動作を自動で完了できることが確認されている。
今後は、装置の精度と速度を向上させ、現場への適用を進める。さらに、非爆薬の原材料を用いた現場製造バルクエマルジョン爆薬や、起爆用の配線結線作業を不要とする無線発破システムとの連携により、発破作業の完全自動化を目指すとしている。
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